第188話 悪魔に肩入れする先輩


 彼と本来は出会うはずではなかった悪魔との対戦。


 初手を取ったのは悪魔だったが、彼の強靱な力によってその攻撃は阻まれてしまった。


「あ、相手が今度は呪文に切り替えましたよ! スキル名は、スローリーロンリー、ですね」


 ふふっ、中々にチャーミングな名前だな。これは誰の意向なのだろうか、地味に気になるな。


「ん、彼が動いていないようだが、これは彼にスキルが効いているのか? まさかそんなことないよな?」


「え、いや普通にこれ彼が呪文の効果を受けて動けなくなっているんですよ? スローリーロンリー、スローリーで相手をゆっくりにし、極限まで動きを遅くさせることで相手の動きを停止、ロンリーは寂しいってことですから孤独になるってことなんですかね? まあ、彼はずっと一人だからあまり効果はないですが」


 ほー、彼は魔法には弱いのか。と言うよりも、物理攻撃にならない魔法、つまりこのような状態異常攻撃に対して少し弱いのか。


 確かに彼は物理的に死ねる方法でしか死んでいないから、耐性もそちら側に偏っているのだろうな。


「あれ? でもこれって動きは止まっっているのに、攻撃は食らわないから結局のところは死にませんね」


 ま、それはそうか。だが、状態異常の延長戦で倒すことはできるのではないか? 何か、何かないのか悪魔よ。


「あ……彼が遅延無効を獲得しましたね。これで悪魔のスローリーロンリーは効かなくなっちゃいましたね」


 あっ、そうだ。彼は常にリアルタイムで耐性を獲得し続けるのか……ならば彼の未知の攻撃で一撃の元に沈めるしかないようだな。


 悪魔よ、そんな呪文あるだろ? 奥の手的な何かで一発でやってしまうのだ。そうすれば、そうすれば彼を倒せるぞ!


「だいぶ相手の悪魔も参ってますね。自分の攻撃は何しても通らないし、唯一効いていた呪文は効かなくなるし、これはもう勝負ありましたかね?」


「いや、その判断は早計だ」


「あっ! こ、これはス・カース・カー、相手の細胞を内部から溶かす相手の奥の手、切り札!」


「遂に来たか。これは物理攻撃じゃないから彼は必ず倒されてしまうだろう。ネーミングセンスだけが気になるのだが、これでこの勝負は悪魔の勝ちだな」


「あっ、いや……」


「ん、どうしたんだい? ほら見てみろ、彼はなす術もなくやられてしまったぞ? これは今回に関しては悪魔良くやったと言わざるをえないな」


「いっ、いやー……」


「ん、何か言いたいことがあれば言っていいぞ?」


「いや多分彼、戻って来ますよ?」


「え?」


「そして戻ってきてはまた死んで、戻ってきてはまた死んでを繰り返して、耐性ゲットするんじゃないんですか?」


「あっ……」


「彼からするとむしろ、殺してくれてありがとう、とさえ思っているかもしれません」


 え、えぇ……私の喜びを返してくれ。

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