「あれ？　ちょっと待ってください、彼、何かしてますよ！？」

「何かしている？　今しがた帰らずの塔を完全攻略したばかりじゃないか、これから一体何をするというのだ？」

「さ、さぁ？　でも、座ってというか座禅を組んで何やら集中している様子ですよ？」

「これは普通に塔の攻略達成を噛み締めているんじゃないか？　それこそもしかしたら宗教的なもので神様的な存在に感謝や報告なんかをしているかもしれないだろ？」

「そ、そうですかー？　今まで彼がそんなことしてるとこ一回も見たことないですけどね？　あ、いやでも瞑想とか断食とかは沢山してましたね」

「だろう？　だから何も心配することはないだろう。逆にここから何ができるというのだ。全て彼自身の手で終わらせたんだぞ？　何かする方が珍しいというものだろう」

「でも、何か引っかかるんですよね。完全に攻略しきったはずなのに……」

「もしかして隠しコンテンツ的なものが用意されているのか？　それに感づいて彼は行動を起こしているというのか？」

「いや、それは……あ、そういえば彼に魔力吸収を渡した張本人、塔の管理者がまだ残ってます！　まさか、それに気づいたとでもいうんですか？　あれはもっと高レベル帯になってからじゃないと、そもそも……」

　塔の管理者、か。確かにそれなら全てを攻略した彼が唯一倒してないコンテンツかもしれない。ただ、それはどうなのか？

　それって、言い換えればこのゲームを完全攻略するために運営をぶっ潰してみた、みたいなことじゃないのか？　

　いや、まあそこまで過激ではないかもしれないが、その戦闘がデザインされているものであるならば、彼は確実にその敵に接触するだろう。

「ん、因みに管理者って誰なんだ？」

「あっ、はいそれは、悪魔ですね」

「悪魔……？」

「はい、この世界設定として悪魔は至る所に潜んでいて、人間社会を裏から牛耳っているのです。それに加えて人間達から力を吸い取るためにこのようにして至るとこに潜伏しているのです」

「なるほど、確か悪魔はラスボス的な立ち位置だったな」

「はい、そうです。ですが、今の現状だと一人のプレイヤーに蹂躙されそうな勢いではありますね。一応勢いだけですが」

「「あっ」」

　彼が遂に接敵した。最難関ダンジョン、帰らずの塔を管理している悪魔。それに対抗する彼。これは今までの中で最も激しい戦いになるだろう。始まる前から両者の間には不穏な空気が漂っていた。

「あっ！」

　先に動いたのは悪魔の方だ。自前の武器で彼に斬撃を与えた。

　いや、与えようとした。だがしかし彼には食らっている様子が一切見受けられない。これはどうやら勝負あったか？

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