第186話 最後に向けて


「ん、ちょっと待てよ。闇視を手に入れたってことはもうなんの障害もなく視界を確保できるってことだろう? そしてその階層のギミックが暗闇だけならもうクリアされたようなものじゃないのか?」


「暗闇だけなら、ですよね? なんとこの階層にはドラゴンがいるのです! 流石の彼もドラゴン相手には手こずるというものでしょう!」


「ん? 彼が今、筋力増強と乾坤一擲、明鏡止水と、怒髪衝天、花鳥風月と、魔闘練気、不動之刀、最後に脆弱化まで使ってるんだが大丈夫か?」


「え、ちょっ、これって大丈夫なんですか……?」


「「あ」」


 彼がドラゴンをワンパンしてしまった。そんなことってあるのだろうか? だってどんなに腐っても竜だぞ? 最強生物として間違いなく頂点に君臨しているであろう存在の竜が、ワンパン?


「…………ごくん。か、彼がまた色々獲得したみたいなので説明しますね」


 彼女も言いたいことが沢山あるようだったが、全てを飲み込んで説明をしてくれるようだ。そりゃ結構な難易度に設定してあるはずのダンジョンのボスをワンパンされて何も思わないスタッフの方がおかしいからな。


 まあ、彼は特殊だからな。それに死に戻りをした回数で言えば十分すぎるくらいしてるからいいってことにしよう、うん。


「まずは竜を倒したことによって称号、竜殺者を獲得しました。これにより竜纏というスキルを手に入れました。スキル効果は竜の力をその身に宿すということで、ステータスとスキル、称号の効果アップになります。彼は多くのスキルと称号を持っていますから、なかなかに大幅な強化と言えますね……」


 これは何気に強いな。いや、普通にも強いのだが、彼の場合は彼女も言った通りステータスよりもスキルと称号の効果アップの方が恐ろしいことになる。


 回復速度も上がるし、強化率とかも上昇するだろうから、ステータスだけでいっても本来のスキルによる強化分も合わせてとんでもないことになるんじゃなかろうか?


 それに加えて魔法やスキルをバコバコ撃たれたらもう手に負えないな。もうそろそろ彼に対する具体的な対応策を考えないと本格的にまずいな……


「そして次は帰らずの塔をクリアしたことによって、踏破者という称号を得ました。これは単にスキルポイントを二十だけもらえるというものですね。彼はSPを本来の用途で使っていませんので特に問題はないと思いますが、ある一定値まで貯まると、次のステージに言ってしまうので、そこが問題ですね」


 ある一定の値というのは修行僧のことだな。これは彼の強さの源泉でもあるからなー。いつか必ず来てしまう、エックスデーといったところか。


「そして、最後にこのダンジョンをクリアしたことに対する、ダンジョンからの報酬があります」


「ん、ダンジョンからの報酬?」


「はい、このダンジョンを運営している者からの報酬と言った方がわかりやすいですかね。その者からスキル、魔力吸収が彼の手に渡されました」


 ま、魔力吸収!? そ、そんなチートスキルを渡してしまったらいよいよ手がつけられなくなるぞ?


 MPは彼の唯一と言っていいほど数少ない弱点であるのに、それが補填されてしまっては……


「先輩の思うところもわかります。ですが、これでようやく彼が帰らずの塔から……あれ? ちょっと待ってください、彼、何かしてますよ!?」


 

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