第189話 辿り着いた解


 彼は、目の前の悪魔に呪文でやられた後、即座に塔に戦線復帰し、そしてまた殺された。


「ほら、言ったじゃないですか」


 何が、ほら、だよ全く。なんで全然死なないクセに死んだら死んだで、死にまくるんだよ。


 やっぱりこんなこと言っちゃいけないんだろうが、頭がおかしい。でもまあ、誰だって彼のステータスになったらあの行動をとるのか?


 いや、それでも彼の思い切りの良さはおかしいな。あんな躊躇いなく死にに行ける人なんてそうそういない。


「はぁ、彼は一体どれだけ強くなれば気が済むのだろうか」


 思わず私はそう独言をしてしまった。すると、


「そんなもの飽きるまでに決まってるでしょー! 一度お金を稼ぎ出して人がもっともっとと思うように、自分が秀でていると認識した途端人間は頑張れるものなんですよ。それに、人は一度手に入れてしまうと、それを失うことに怯え始めるものでもあるんです」


 そう諭されてしまった。いや、私もそれくらいのことは分かっているのだが、それでも、それでも不満の一つくらいは言わせておくれよ。


 でも確かに自分も、小さい頃から成績が良くて褒められては勉強し、ゲームが上手いと言われれば熱中していたような気もする。


 まあ、私の幼少期なんてどうでもいい。それよりも彼の顛末の方が気になる。


「あ、彼倒しちゃいましたね。最後の決まり手は聖槍でしたね、悪魔を聖なる槍で倒すなんて、流石ですね!」


 何が流石なのかはさっぱり分からないが、結局彼の勝利に終わってしまった。


 というよりも彼がプレイヤーである以上、彼の勝利は揺るがないのだ。なぜなら彼が勝つまで挑めるからな。つまり相手がNPCの場合は彼の必勝と言うことになる。


 と言うことはだ、彼を真に負かしたいと思うのならば、その敵もプレイヤーで無ければならない。そうしてやっと互角の条件になるのだからな。しかも、これは前に一度考えていた、彼をこちら側に引き込むと言う案にもつながってくる。


 何かいい案があれば良いのだが……


「でも先輩、最後は聖槍を使って彼が勝ちましたが、やってることは彼の方がよっぽど悪魔的でしたよね。自分が勝つまでしに戻ってくるって、相当たちが悪いですよね? もういっそ、そんな悪魔を作ってみますか? ラスボスに」


 ん、悪魔を作る? ラスボスに?


「はっ! そ、それだ!」


「え、な何がですか?」


「彼を彼こそをラスボスにするんだよ! 鬼畜で最強で進化し続けるラスボス! それをプレイヤーが倒せるなら倒せるで彼の初めての負け、になるだろうし、勝てないのであればそれはコンテンツとして優秀ってことになるだろう?」


「キュ、急にどうしたんですか? ……ふむ、でも理屈は通ってますね? やりますか?」


「やるしかないだろう!」

 

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