第183話 完全模倣の攻略法


「彼を完全にコピーした存在、ということか……」


 それはつまるところ彼の不死性も、あの暴力的なスキルの数々もコピーされるということだ。異なるのは行動パターンのみ。


 ということはAIと人間の勝負になる。彼は果たしてAIに勝てるだけの技量はあるのだろうか?


「ということか……じゃないですよ! 彼はもうとっくに対応策を打ってますよ!」


「対応策?」


「はい! ほら、コピーされてしまっては自分の強みがなくなるからと、早速死にまくってますよ! 彼は死ねば死ぬほどステータスが上昇しますし、もしかしたらワンチャンでスキルが生えるかもしれませんしね!」


「そ、そうか」


 でもそれだと、またコピーされてイタチごっこにならないのか? あ、コピーは一回だけですか、はい、了解しました。なるほど、だから彼は迷わず自害したんですね。


 というか、それでいいのか? この層の真髄は人間と機械、AIとの戦いにこそあるべきではないのか?


 いや、一応クリエイターでもある私がべき、とかそういう思考ロックしているのは良くないのだろうが、それでも、それでも、それでいいのか? と思わずにはいられない。


 それなら皆、一度死んで強くなってからまたもう一度再戦しに来るんじゃないのか? あ、でも普通ならパーティやレイドでの戦いになるからそれは難しいのか。


 いつでもどこでも死ねる彼だけの特権ということなのか。


 やはり毎回毎回、突拍子もない解決策というか、ぶっ飛びすぎてるというか……ま、それが彼の強さの由縁なのかもしれないのだがね。


「あ! また彼が戻ってきましたよ! そして今度は何度か打ち合った後に、彼がスキル【脆弱化】を使用して敵の剣をぶった斬りましたよ!」


 お、おう。もう突っ込まない。もう突っ込まないぞ?


 それよりもさっきから、スキルが生えるとかぶった斬るとか、後輩が女性らしくない語彙を使っている。まあ、女性はゲームを触る機会すら、男性に比べたら少ないのかもしれないが、それにしても彼女はどこか毒されている気がするな。


 別になんの支障もないから構わないのだが、これからゲーム関連の会社に就職しようと思っている女性は是非とも気をつけて頂きたい。男子からしたら女子の方がゲーム強かったら目も当てられないからな。


 女子で言うところの料理みたいなポジションだな。


「先輩! 何上手いこと言ったな、俺。みたいな顔してるんですか? 別に先輩は何もせずにずっと眺めてただけじゃないですか! 私の方がよっぽど、よーっぽど仕事してるんですからね?」


 なるほど、私よりも沢山働いているから語彙もそんなふうになってしまうのか。まあ、それなら仕方がないか。私はなるべく標準語を話せるように努力しよう。


「な、なんですかその慈愛に満ち溢れた目はー! 馬鹿にしてるんですかー!?」

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