第184話 真贋の差


「あ、でもコピー彼の方もまだまだ諦めていないみたいですね。彼にへし折られた剣をダガーみたいに持ち替えて接近戦で攻撃する構えですね」


 なるほど、まあ人間じゃないからこそ、諦める、という選択肢がないのだろうが、そうだとしても、この状況は流石にコピー君の不利じゃないか?ダガーと長剣だと流石に間合いの観点から長剣をもつ彼の方が有利だと思うからだ。


 だが、その反面、コピーの方は二本あるうちの片方は長剣のままであるのだ。だから、リーチの違いを生かした緩急をつけることができれば、あるいは、と言ったところか?


 いや、でも流石に彼が死にまくったことによるステータスの差が響くだろうな。一本剣が折られているし、このまま順当にいけば彼が勝って終わりだと思う。


 お、ここで彼が何だかコピーの動きに慣れてきているように見える。彼のクロスカウンター気味の反撃が刺さり出しているように見える。相手は確かにAIだからそのパターンを読み解けばそれも可能、なのか?


 まあ、これで彼が俄然有利な状況だな。まあ、問答無用でステータスを彼が上げてきた時点で勝負は決していたのかもしれない。


 相手AIもそれは予想外の行動だったことだろう。


「あ、龍になった」


「ん、りゅうになった?」


 彼女から一瞬不可解な言葉が聞こえてきたので、思考の海から一旦顔を出して、モニターをみてみると、そこには龍が顔を出していた。


「え?」


「これはどうやら、コピー側の龍化のようですね。彼に追い詰められて最後の手段として使ったのでしょうね。あ、彼もしましたね。まあ、そりゃ相手がしたら自分もしない理由はないですよね、これで正真正銘大海龍決戦の始まりですね!」


 おぉ、彼女が興奮している。大きな怪獣、じゃなくて海龍同士の戦いに興奮するって、男の子かよ、って突っ込みたくなるところだが、ここは我慢だな。


「「あ、」」


 唐突にその終わりはやってきた。両者共に龍化したのだが、一歩先に動いたのが彼だった。その初動に一切の迷いがなく、またスキル選択も完璧だった。


 思念の頭突きにロケット頭突き、龍の状態でも発動できるスキル選択に加えて爆発力、威力ともに兼ね備えているこのスキルを瞬時に選択できるのはもう流石としか言いようがない。


 これに関しては龍モードの扱いにおいて、彼の方に一日の長があった、と言う感じだな。


 まあ、いかにAIといえども龍モードを練習することなんて滅多にないだろうし、その場で最適解を出そうとしたらそりゃ時間がかかるだろう。


 そうなってくると、ほぼ反射で動いた、動けた彼には負ける道理しかなかったのだろう。


 ま、彼は強かった。という、ずいぶん前から知っている情報を改めて知らされた結果に終わってしまったな。


「あ、彼なんか色々獲得してますよ、スキルと称号」


 いやだ、もう聞きたくない。強いって今認めたところなのになんでまた強くなるんだ? もういいだろう、良い加減、もう勘弁してくれよ。

 

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