第182話 反芻と疑念
彼が吸血鬼との契約をするに至った経緯を事細かに説明してもらうと、その意味、その様子がようやく理解できた。
まず、そもそも吸血鬼のお孫さんの方から自分を弟子にしろ、と持ちかけられたらしい。
だが、彼はずっとそこに止まるわけにもいかない。どうしたもんかと考えた挙句、彼が従魔を従えているスキルである、服従を提案した。
しかし、お孫さんはお孫さんで気高き種族である吸血鬼が人間に完全に服従されるのに対しては忌避感を示したのだ。
私からすると弟子になりたいと言ったからにはそのくらいの根性を見せろよ、と思わなくもないが、まあ、生物的な本能なのだろう。仕方のないことだ。
そして、そこに婆さんからの助け舟が入る。吸血鬼が人間の下に入るとなると外聞も良くない、と言うことで、婆さんは服従とは似て非なるスキルである、召喚と言う選択肢を提示した。
召喚というのは、お互いに信頼関係がある状態で予め契約をしておくことで、いつでも召喚できる、というものだ。
ただ、服従と違う点として、呼び出される方にも拒否権があったり、信頼関係がない相手に無理矢理契約して呼び寄せても、MPを消費してしまうこととなる。
そういった意味で服従よりもより対等関係を結ぶことができるということだろう。
そんなこんなで無事契約完了し、彼はその階層を去ったというわけか。
「ふぅ……」
何だが疲れたな。彼の出来事を復習するかのように後追いしていっただけなのだが、これほどまでに体にくるとはな。
私が歳なのか、それとも彼の体験が濃ゆすぎるが故なのか。まあ、どっちも原因としてはありそうだが、、もう少しゆったりまったりして欲しいものだ。
「あ、先輩! 次の階層は結構面白いですよ! なんと、彼は彼と闘うみたいです!」
「お、おぅ」
ま、そうなるわな。彼が階層を去ったということは、新たな階層に到着するという意味であるし、彼が目の前に新たなステージがあるのに休息をとるとも思えない。一体、彼のそのアクティブさはどこからくるのだろうか?
「彼は彼と、ということはコピーってことだろう? それは彼が階層に入った時点で行われるのか?」
「はい! 階層の中央に鏡がありまして、そこに映った人と全く一緒のものが出てきます! まあ、見た目は真っ黒ですが。違うのは脳みそくらいなので、そこに打ち方ないといけませんね!」
なるほど、全く同じだからこそ、思考をアップデートできた方が勝つということか。
でも、私たちの戦闘AIもなかなか強いのではないか? それこそ学習能力も備えているぞ? 彼は勝てるのか?
「これってコピーできる人間の上限ってあるのか?」
「はい、一体だけです!」
ん、ってことはこれ、完全にパーティやレイド攻略向けじゃないのか?
彼、本当にいけるのか?
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