第181話 理解不能な言動
「そ、蘇生!?」
はい? だって、まあ元から難ありな性格をしていたにせよ、彼がグレた大きな要因である、自ら犯した両親の死、それを、それを目の前でなかったことにされたら……
相変わらず、無茶苦茶だな。発想がぶっ飛んでしまっている。こんなこと常人に思いつくわけがないだろう。もし、仮に自分の死んだ両親が一瞬でも帰ってくると考えると、嬉しさもあるような、少し悍ましさもあるような。
だが、それを目の前で自分自身のこととして体験するお孫さんは何を思うのだろうか。
「そして彼は蘇生をしようと試みるのですが、ここで大事なことに気がつきます。そうです、彼はお孫さんのご両親の亡骸がどこにあるのか知らなかったのです。まあ、言ってしまえばお墓、ですね。流石にいくら彼と言っても無からご両親を蘇生させるのは厳しいようですね」
いや、まあ、それはそうだろう。無から蘇生できたらいよいよ不味いだろう。というか、それはゲーム的に実現可能なのか?
おっと、話がそれたな。時を戻そう。
「それで、結局蘇生はどうなったんだ?」
「はい、私もこれは非常に予想外だったのですが、なんと、彼とお孫さんが対峙している場所になんと、依頼者本人である、吸血鬼一の魔女、お婆さんがやってきていたのです!」
「なるほど、お婆さんが様子を見に来ていたのか」
「はい! それもそのはず、彼に孫をどうにかしろと言ったものの、本当に心配なのは孫の方、それを初対面の男に完全に任せるというのは流石に不安が伴いますよね。そこで自らお婆さんが登場したというわけです!」
「うん、それで蘇生は?」
「まあ、まあまあ、そんなに結論を焦らなくてもいいじゃないですか! 婆さんは元々、隠れて二人の様子を見守っていたのですが、彼によってそれを暴かれてしまいます。そして、見つけられた事を称えて、なのか、彼に墓の位置を教えたということです!」
ふむ、意味がわからない。だが、まあ、なんとなく分かった。この私を見つけるとは、なかなかやるな、いいだろう、墓の一つくら場所を教えてやろう、ということだな。
いや、全く吸血鬼のコミュニティはどんな世界なのだろうか。私たち人間からは想像もつかないような生活なのだろうな。……まあ、知りたくもないが。
「そして見事無事にご両親を蘇生させた彼は、無事に依頼達成! となるところでしたが、まさかの急展開が起きたのです!」
「急展開?」
「はい、諸々の報酬を受け取り、ホクホク顔でその場をさろうとした彼ですが、去り際に、あのお孫さんから、弟子にしてくれ! と呼び止められたのです!」
「でし?」
「そして、婆さんを含め三者でよく話し合った結果、彼とお孫さんは、召喚関係になることが決定いたしました。これでいつでも稽古ができる状態になり、またもし今後他の吸血鬼に襲われたとしても彼が助太刀に向かうことがでいるというわけです! これにて一件落着、といったところですね!」
「ん?」
あれ、これは私がおかしいのだろうか? 彼女の言っていることの一割もまともに理解できなかったのだが?
あれ、彼女は何語を話していますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます