第180話 若気の至り
「そ、それでどうなったんだい?」
「はい、とうとうお孫さんの方が音を上げて降参したようです。そしていよいよ彼が本題へと移りました」
いやいやいや、前置きにしては長すぎるだろ。むしろ喧嘩の方が男の子たちからしたらメインなのではないか?
「彼が珍しくもお孫さんに説教を始めました。彼も慣れないことなのかぎこちないですが、案外上手く諭せたみたいですね!」
うん、いや彼の正確な年齢は知らないのだが、あの見た目で説教し慣れてる人なんていないのではないか? 見た目からすると子供はいないだろう? もしあったとしたらどれだけ経験豊富なんだよ。
いや、でももし彼が会社経営をしていて部下を叱ったという経験がある、とかならば……いけるな。
「そして、ここで彼が暴挙にでます」
「暴、挙?」
ここにきてどんな暴挙があるというのだ? 勝手に他人の屋敷に入ってその屋敷の主人をボコボコにする以上の暴挙があるのか?
いや、それを超える暴挙があるということか、それは一体……?
「まず、お孫さんのバックグラウンドから説明しましょう。このお孫さんはかなりの問題児で、同族殺しを多数行っており、多くの吸血鬼からその身を狙われております」
お、おぅ。お孫さんもなかなか、だな。彼ほどぶっ飛んでいるとは言えないが、それに似た何かを感じてしまう。
まあ、彼はそのぶっ壊れた何かが自分に向いているのに対し、このお孫さんの場合はその何かが自分の外側に向いてしまったんだろうな。それによってここまで結果に違いが出るというのだから驚きだ。
「そして、古い言い方をあえてしますが、今ではすっかりヤンキーとなってしまったお孫さんですが、もちろんそれには理由があります。それは両親の死、ですね」
「なる、ほど」
ここは王道パターンだな。両親などの最愛の人を失って闇堕ちするなんてのはよく聞く話だ。
「まあ、お孫さんの場合は自分でご両親を手にかけたんですがね」
「ファッ!?」
前言撤回、前言撤回、全然よく聞く話じゃない。なんで自分で殺しておいて闇堕ちしてるんだよ。ってかそもそもなんで両親を自分で殺してるんだ? ふっつうにおかしいだろ。
「な、なんでだ? その理由はわかるのか?」
「まー一応設定、というのが正しい回答でしょうが、それにそって答えるならば、彼が気に食わなかったのでしょう。吸血鬼一の魔女であるお婆さんを持ち、自分もその力の一旦を受け継いだお孫さんは、自分と比べてあまりに無力な両親が許せなかったのでしょう。若気の至りもあったのでしょうね」
いや、若気の至りで済まされる話ではないと思うのだが……
「ん? 彼の暴挙ってなんだったんだ?」
「あ、はい、今からですね。彼がなんと、その死んだ両親のお墓まで行ってその二人を蘇生させてしまったのです」
「…………はい?」
今まで彼の言動には理解できないものが多くあったが、今回ばかりは、今回ばかりは本当に理解が追いつかなかった。
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