第179話 破格の報酬と軽い運動


 えーっと、それで? 同族殺しをした婆さんの孫をどうにかするために彼が動く、っていうわけだな?


 いや、まずどうにかするってどういうことだよ。ざっくりしすぎているだろう。もっと具体的に何かないのか?


 それこそ、孫を守ってくれ、だとか、孫を自衛できるくらい強くしてくれ、とか、色々あるだろう。なんでどうにかしてくれ、なんだよ。


 まあ、やり方は好きにしていい、っていう婆さんなりの計らいかもしれないが、それは別に嬉しくはないだろう。だって、ちゃんとやり方を指定された方がプレイヤー側としてはやりやすいんだからな。


「先輩、さらにこのクエストでは報酬がかなり豪華なのです!」


「報酬?」


 確かに、クエストといえば報酬はつきものだろうが、かなり、というほど豪華になることなんてあるのか?


「はい、なんと吸血鬼に伝わる秘密道具、そして吸血鬼に伝わる最終奥義までもが報酬として受け取れるのです! 本来ならば秘密道具だけでしたが、彼の好感度のおかげなのかは分かりませんが、追加されていますね!」


「なっ、そんなに?」


 秘密道具と最終奥義ってどんな大盤振る舞いなんだ!? そんな報酬を提示されたら誰もがそのクエストを受けるだろう。


 いや、だからこそなのか? そこまでしてでも受けさせたいほどこのクエストが難しい、ということなのか? もしそうなら、彼がもしクリアできなかった場合は……


 いや、そんなことはないだろう。彼は今まで散々私たちの予想を裏切ってきてくれたからな。今回に限ってそんなことはないだろう。


「そ、それでそのクエストは結局どうなったんだ?」


「はい、それなんですが、お婆さんの言い方だと、そのお孫さんと一悶着あるかと思っていたのですが……」


「思っていたのですが?」


「いや、一悶着はあったのでしょうが、彼からしたら悶着のうちに入ったのかどうかが……」


「ん、どういうことだ?」


「はい、詳しく説明しますね。まず、彼が孫のいる屋敷に侵入しました。その時点で孫さんはご立腹のようで、彼と出会った瞬間に殺そうとしました」


「おぉ、初手からぶっ飛んでるな」


「ですが、もちろん彼は死にませんので、お孫さんは相当焦ったみたいですね」


 それもそうだ。ちゃんと殺そうとしたのに死んでなかったんだからな。それで焦らない方がどうかしている。


 ってか、もちろん彼は死なないって随分なパワーワードだな。まあ、それを平然と受け入れられる私も私なんだがな。


「そしてその後も軽く一揉めあったのですが、彼からしたら食後の運動程度でしかなかったのでしょう。不完全燃焼だったのか、今度は彼が攻勢に転じて、お孫さんを攻めまくったのです!」


 えぇ、そっち?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る