第172話 予期せぬ解放
「あ、彼、ネーミングセンスはないんですね。良かったです、なぜか安心しました」
いや、まあこの世界では人間やめてるようなもんだけど、普通に中身は人間だからなー。ネーミングセンスの一つや二つ悪くても仕方がないだろう。
それにしてもアイスかー。私と同じセンスをしているとしか言いようがないなこれは。
「あ、早速ワンちゃんに敵を倒させるみたいですよ? これじゃあまるでテイマーみたいですね!」
確かにそうだな。自分が使役したモンスターに戦わせるんだからな。でも、普通のテイマーと大きく違うところは彼自身が強いところなんだよな。
普通はテイマーを相手する時はテイマーを狙えば良いのに、そのセオリーも通用しない。これは戦闘系テイマーという新たな可能性の誕生だな。
「え、この子、今魔法撃ちましたよ? まだ彼は強制進化してないですよね? あれ? この子って強いんですか?」
「ん、別に魔法くらい撃てるだろう。魔法が撃てたからといって強いというわけでもないだろう?」
「い、いやそうですけど……ほら、これ見てくださいよ!」
彼女に示されたスクリーンを見てみると、可愛らしい犬が大の大人を普通に魔法で圧倒していたのだ。しかもかなりの規模の魔法を連発して。
「あ、そういえば開発担当の誰かが、可愛いと強いは共存する!! って高らかに宣言していたような……?」
絶対ソイツだろ、誰だよそんなことたかかに宣言した輩は。
まあ、コンセプトとしては悪くはないが、それにしても強すぎるだろう。なんでこれほどまでに強いんだ?
「あ、」
「ん、どうしたんですか、先輩?」
「い、いやもしかしたらの話なんだが、この犬、いや犬だけじゃないな。他にもいた捕まってた動物達は強すぎるがあまりにあそこに待機してたってことじゃないのか? と思っただけだ」
「あっ」
そう、ゲーム的な展開として、ある程度全体のレベル感が成熟してから解放するコンテンツ、みたいな感じの狙いだった可能性が浮上してきたのだ。
本来であるならば、このアジトに直接迎えるようになるには到底先であるだろうし、仮に彼みたいに偶然何らかの理由で入ることができても、普通はボスを真っ先に狙いに行く。
つまり、あそこは絶対に安全、だったのだ。
それが彼の手によって解き放たれてしまったというわけか。そうなってくると、囚われていた人間達も気になるな。
女子供しかいないように見えたが、もしかしたらとても重要なNPCがいたのかもしれない。
そしてそれがもう解放されてしまったとなると……
思わぬ問題を起こす可能性もあるし、逆に必要な時に必要な事ができなくなる、という可能性も出てくる。
「はぁ……」
これでまた私の業務が増えることになるなぁ。
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