第168話 彼の怪行
より詳細な情報を求めに行った彼女だったが、戻ってくると、特に何も言わずに業務に戻っていった。
欲しいものが得られなかったのだろうか、それとも言えないだけの理由があるのか。どちらにせよ、これでこの件は一件落着ということだな。
後は、彼がこの階層を何事もなくクリアしてくれればいいんだが……
「あ、姿を消して走り出しましたよ!」
そうは問屋が卸さ、、え? 本当? 素直にクリアしようとしてくれてるの? 絶対にそううまくは行かないと思っていただけに、少し嬉しいな。
「うわ、彼えげつない殺し方しますね。爆弾生成を使って、めっっちゃ小っちゃい爆弾に最大火力を積み込んで、それを直接、敵の人間に投げつけて爆発させましたよ? どういう思考回路でこの殺し方が思いつくんでしょうね、ほんと」
彼女の雰囲気がどことなくいつもと違うと感じるのは気のせいだろうか?
まあ、いいか。それよりも爆弾生成って確かにえげつないな。普通爆弾って広範囲高火力で使われるもの、という認識があるだろう。
その固定観念を文字通り爆発させて、こんな斬新な使い方をするのに至ったとは、やはり発想力が素晴らしいな。
私たちでは到底思いつきもしないことを毎回してくるから、それが怖くもあり、徐々に楽しみにもなっている自分が怖いな。
慣れ、というものは良い方向にも悪い方向にも作用してしまうからな。楽しむ分にはいいが、常に危機感を持ち合わせることを肝に銘じよう。
彼という存在がこのゲームにおける爆弾であるということを。
「……」
決まった、な、これは。座布団を二、三枚くらいもらってもいいんじゃないだろうか? このまとめ方は年に数回、いや数年に一度の傑作だな。
「先輩、何気持ち悪い顔をしてるんですか? 早く業務をしてください」
「あ、はい。分かりました」
これじゃあ、どっちが先輩か後輩かわかんないだろ、もっと先輩としての威厳を見せていかないとな。
「え!?」
「え? どうしたんだ?」
「いや、彼が変なスキルを取得したんですよ……狙撃っていうスキルですね」
「狙撃?」
確かにこのタイミングで獲得するのは少し違和感を覚える。なんせ彼が行っているのは、スナイパーで狙って、というよりはただただ爆弾を手で投げているのだからな。狙撃とは似ても似つかないと思うのだが。
「どうやらこれは、投擲スキルの強化版として彼に与えられたみたいですね。恐らく投擲の熟練度がマックスに達してしまったんじゃないでしょうか?」
えぇ……ってことはどれだけ彼はものを投げ続けてるんだよ。熟練度がマックスってかなりの凄いことのはずなのに、彼はこうも易々と達成してしまうなんて、本当に恐ろしい限りだ。
「で、先輩、なんで気持ち悪い顔してたんですか?」
え、それ掘り起こすの?
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