第167話 ありえない称号
「え? なんか彼、変な称号を手に入れましたよ?」
変な称号って、彼はいつも変なスキルと称号を獲得してるだろう。今更別に特筆すべきことではないと思うのだが。
「えーっと、、裏切り者っていう称号ですね。なんでこれを彼は今手に入れることができたんでしょうか?」
確かに変な称号だなそれは。
ここは今、盗賊のアジトだろう? そして彼はその盗賊団の構成員とかではなくてただの侵入者だ。
そんな彼が誰かを裏切ることなんて、普通に考えると不可能なはずなのだ。なんせ、そもそも信頼関係を構築することが無理な話だからだ。
それなのにも関わらず、彼は裏切り者という称号を獲得することが現にできている。
「なぜだ……?」
「あ、先輩、もしかするとですよ? 裏切り者の説明文に『自分のことを信頼している人を殺す』って書いてあるんですよ。ってことは彼は騙して、相手に何かをさせたんじゃないですか? 例えば俺の母ちゃんはデベソなんだ……ザク。みたいな」
「いやいやいや、その可能性も確かにありえると思ったのだが、それだと、『信頼』からは逸脱してしまわないか? 俺の母ちゃん、デベソなんだ、って言われてその人のこと信用するか?」
それと、なんだその例は! 他にもっといいのあっただろ! 俺、実は足を怪我してる、とかでも良いわけだろ? なんでそれをチョイスしたんだ。
「確かにそうかもしれませんね……でも、そうなってくるといよいよ難しいですね」
「あ、あと、ザクって剣で殺したみたいな効果音だったが、彼は今、スキルのギロチンカッターで殺していたから、そこも間違えてるぞ」
「そ、それは今関係ないじゃないですか! そんなこと知った上であえて臨場感を持たせるためにしたんですー!」
「ふふっ」
「なんですか、その微笑とも嘲笑いとも取れる、ふふっ、はー!!」
「すまんすまん。ただ、これは本当に謎が深まるばかりだな。会話の内容を聞ければわかるかもしれないが、そこまでするのも、なー」
なんとなく個人的に会話の内容を聞いたり、っていうのはしないようにしている。誰にも聞かれていないだろうっていう体でどのプレイヤーも話しているだろうからそれを聞くのは憚られるからな。
その他の理由としては、別に会話内容よりも、人間がこの状況に陥った時にどう動くのか、という行動心理の方が興味深いのだ。だから、会話等は逆にノイズになってしまう。
あとは、単純に手間がかかるというものだ。みるだけならば常時展開されているスクリーンだけでいいが、会話を聞くとなると、また別の機械を通さなければならなくなるのだ。
それが面胴くさいんだな。まあ、理由としては一番最後が一番大きくて、一番最初が一番小さいな。
「先輩、せんぱーーい!! 急に話の方向展開してそっから無視とはいい度胸ですね! こうなったら私が真相を突き止めますよ!」
そう意気込んで彼女は別室に駆けていった。オフィス内で走るのは厳禁だぞ。
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