第166話 厨二と遺憾
「え、二刀流!?」
「ん、先輩どうしたんですか? 二刀流に憧れでもしましたか? 二刀流なんてもうまさに厨二たちのど真ん中なんじゃなかったですか?」
「……おはよう」
なんとも間が悪い。なぜこのタイミングで起きてくるんだ、それも私がちょうど二刀流と発言したタイミングでだ。
後輩も後輩だろう、なぜ二刀流というだけで憧れているということになってしまうのだ。おかしいではないか、私は断固抗議するぞ。
でもまあ、確かに急に「二刀流!」とか言い出したらそりゃ憧れてるかもしれないし、厨二かもしれない。ついでに体の動きとかもあればバッチリだな。
だが、私の場合は「二刀流!?」だぞ? この違いをしっかりと汲みとっってもらいたいものだな。
彼女の場合は全て分かった上でこういうイジり方を指定いるという可能性が大いにあるのが食えないところではあるな。
よし、ちゃんと説明しよう。しっかりと誤解を解くことができればこれからの関係性に罅が入ることもないだろう。
そう思い、私はちゃんと時間をとってことの顛末を事細かに説明した。そうやら私は自分で思っている以上に二刀流に憧れていると思われたくないらしい。
だが、説明を終えた後の後輩の反応は予想していたものとは異なるものだった。
「ってことは、先輩は剣の二刀流じゃなくてチェーンの二刀流に憧れてるってことですね!」
なぜそうなる……
「これは厨二特有の逆張りってことですかね? ですが逆張りするにしても少し方向ミスってません? 普通なら拳銃の二刀流とかの方がカッコよくないですか? いや、それ込みの逆張りなんですね! 失礼しました、先輩はもう既に何周もこの議論を繰り返した後、ようやくこの境地にたどり着いたのですね! 尊敬いたします!」
いや、そうじゃない。ってかどういうことだよ、逆張りって。何周もするってそれ、逆張りの逆張りの逆張り、みたいなことか?
って、それでどうやったらチェーンにたどり着くんだ!
これは誠に遺憾である。だが否定しようにもその材料は全て使い果たしたし、仮に残っていたとしてもそれはよからぬ方向、想定外の方向に向かうだけだからもう、諦めるしかないようだ。
チェーンの二刀流使い、この称号を甘んじて受け入れなければならないのか……どんな世界線に生きてたらあこんなことになるのだろうか。
せっかく彼女がいないからと、彼の様子を見守っていたのだが、こうも報われない結果に終わるとは……
もう、できることなら彼の様子なんて見たく無いものだな。
そうだ、彼女がいない時にこそ私は食事をしたり、くつろいだりすることができるではないか!
……先輩が後輩に合わせて生活するなど、誠に遺憾である。
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