第163話 修羅の所業


「あちゃー普通に再装填の間に中へと入られましたねー。このマークツーは結構再装填の時間が短くなっていると思っていたんですが、まさかあんなにバッサバッサ斬り進んで行くとは思いませんでしたねー」


 彼女はまるで潜入されたのが嬉しそうにそう言った。


「あ! 今度は迷わずキャタピラーのところまで行って、爆炎魔法でぶっ壊してしまいましたよ!? 彼は容赦がないですね、それにこの機体の設計図でも持っているんでしょうか?」


 彼女が非常に饒舌だ。それほどまでに自分が関わったこの機体を攻略してくれるのが嬉しいのだろう。


 まあ、気持ちは痛いほどわかる。私だって、このゲームにプレイヤー達が乗り込んで来た時は、なんとも言えない気分になったものだった。


 それと、キャタピラーに迷わず到着できたのは、ただ単に下に行っていただけじゃないのか? とにかく下へ下へっていう感じの進み方だったように思える。


「うぉっ! ちょ、何やってるんですか、この人! ふっつうに天井に穴開けて登ってを繰り返してますよ!? 頭おかしいんですか? やってることがもう、小学生じゃないですかー……」


 こ、これは確かに彼女もドン引きな行為だ。しかし、よく言えば固定概念に囚われない自由な発想の持ち主とも言えるからな、別にそこまで悪いことでもないだろう。


 あと、彼も後輩にだけは小学生とは言われたくないんじゃないか? 君も大概だと思うぞ? うん。


「あ、彼なんかゲットしちゃってますね。破壊者っていう称号ですね。効果はーって、え? 物は壊しやすく、生物は欠損を発生しやすくって、もういよいよじゃないですかー! 私のMk-Ⅱがー」


 って、そっち!?


 彼が強くなることに対してではなく、彼が更にこの機体を壊すことを懸念しているのか? まあ彼女らしいっちゃらしいが、それにしても随分と思い入れが強いんだな。


 いつもなら基本的に彼のスキルに対する評価を述べていたと思うんだが。ま、愛が大きいことはいいことなんだろうな、多分。


「あれ、彼、そのまま機体の文字通り上まできちゃいましたよ? 一体何をするつもりなんでしょうか? あぁっ! アンテナをぼきぼきと! ビーチフラッグじゃないんですから、そんな引っこ抜いたり、折ったりしないでくださいよー! はぁ、これでもう完全に動きませんよ、これ遠隔操作なんですから……」


 いや、別にビーチフラッグも引っこ抜いたり折ったりするものではないぞ? って、これ遠隔操作だったのか、すごいな技術の進歩は……


「あ、また中に入ったと思ったら今度は何かを探しているようですね。一体何を探してるんでしょうかね、物凄い速さでグルグルしてますけど、、、って、あ、壊してる! 壊さないでー! もう、マーク2のライフはゼロよ!」


 ……うん。御愁傷様。私の予想だと彼は操縦室でも探しているんじゃないか? 多分遠隔操作ってこと知らないだろうし。


 でもまあ、これは流石に彼女が可哀想だな。


 最後は、キャタピラーを破壊したことによってこの機体は完全に機能を停止された。


 彼は、「お、あった」みたいな顔をして魔法陣へ向かい、姿を消したのだった。


 魔法陣を探してたのかな? それよりも彼女に開いた傷を埋めるのはこちらの仕事になるのだから、攻略はしてもいいが、無駄な仕事は増やさないでくれ、全く。


 まあ、金もとい甘いものによってその傷は塞がるから私が我慢すればいいだけなんだがね。


 くそう。

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