第162話 マークツー
「ちょっとこれはどういうことだろうか、理解が追いつかない。説明をもらってもいいだろうか?」
「え、はい、いいですけど、そんな難しいことあります? 防犯プログラムでも、犯罪者対応プログラムでも処理しきれなかった案件はより、処理能力が高い物に任されるのは当然の流れじゃないですか?」
「……つまり、これが処理能力が高い物体である、と?」
「はい! この動き撃退すること山の如しMk-Ⅱは、この街や国でもトップの処理性能を持った機体ですからね! 最新技術がそれこそ山のように詰め込まれていますから、安心してください!」
い、いや、その言葉が何よりの不安要素なんだが……
それに、なんだその頭が悪そうな名前は、動き撃退すること山の如しって、山は動かないし、撃退もしないぞ? こんなことは口が裂けても言えないが、酷すぎる。
まあ、言いたいことはギリギリで伝わっているからいいものの、これは絶対に一般公開できない名前だな。このゲームの品が問われることとなってしまう。
それにマークツーって、試作機でもあったのか? 我々の社員は一体何をしているのだろうか。できればこれの実行犯は彼女だけであってほしい。
「ふぅ……」
「あれ、先輩お疲れですか? しっかり休まないといけませんよ? 休息をとってパフォーマンスを上げることも業務のうちの一つですから!」
原因は貴様だ、とか、君は休んでばっかりじゃないのか? とか、なるべくパフォーマンスを下げる原因を持ってくるな、とか、色々言いたいことは山積状態だが、ここはグッと堪える。私は大人だからな。
「はぁ……」
「あ! 溜息はいけませんよー! 幸せが逃げちゃいますからね!」
それは幸せの真っ只中にいる人限定だろう? 今幸せを感じてない人には無意味な言葉だ。それに、そんなため息くらいで逃げるのならば、逃がしてしまえ。私はもっと確固たる安寧が欲しいのだ。
ッドガーーーン!!
「あ、ヤマークツーが一番大っきい大砲で彼を狙いましたね。彼はなんとか避けましたが、流石にこれはキツいでしょう」
ふむ。私としての考えは逆にこの初手という最高のタイミングを逃したことによるディスアドバンテージの方が大きいと思うのだが。
彼に一度見せてしまえば、対応されるのも時間の問題だ。それに、大きければ大きい大砲ほど再装填に時間がかかるのは自明だからな。
ってか、早速名前を略しているじゃないか、こだわりとかはないのか?
「え!? 彼があの一番大きい自慢の砲身を斬った!?」
大胆だな相変わらず、躊躇いというものがないのだろうか。普通の人ならまずそんなことはしないだろうな。
「って、彼、何してるんですか? なんと砲身の中に自分から入っていきましたよ? これじゃ袋のネズミじゃないですか!」
「……」
確かに、何をしているんだろうか。流石になんの考えもなしに、とは思えないが、それでももう少しまともな手はなかったのかと、そう問いたくなるなこれは。
でも、何かあるのだろう? と、そうやって彼が何をするのか楽しみになってしまっている自分が少し怖い。
できれば穏便に……済むわけないか。
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