第158話 悍ましい世界


「え……」


 今のが、強化スタンガン、またの名を電気ショック、か?


 いやいやいや、どう考えても電気ショックとかスタンガンとかそういうレベルじゃなかったぞ? 電撃砲とか雷撃とかそういった名前の方がピンとくるレベルの強さだったんだが。


「こ、これはすごいな」


「ですよね! 先輩ならわかってくれると思ってましたよ! でも、彼は避けてますね……じゃあちょうどいいです、プログラムC、敵の排除を見せてもらいましょう」


 そう言った後輩の目の奥の奥から光が消え、薄暗く笑ったような、気がした。そんな雰囲気が一瞬だけした。


 キュイーン、ッドーン!!


「え?」


 今、画面の向こうでロボットがそのプログラムCとやらを発動させたみたいなんだが、どう考えても防犯とかそういうレベルじゃない。何もしてない彼にここまでする? っていうレベルのレーザーを発射していた。


 エネルギー砲と言ったほうがいいだろうか。まあ、名前はどうでもいい、ただただやりすぎなんだよ。


「あ、これも避けられちゃいましたね! これは対象を完全排除する為のものなんですが、これに失敗すると、もう後がありません。ですから、増援を呼ぶのです」


「ほほう」


 一機で無理なら、数を用意する、ということか。いや、それにしても厳重な守りだな。そこまでして守りたいものがあるのか?


「で、増援が到着すると、またプログラムAの網から、ってなりますね。後はこれの繰り返しです!」


 いや、繰り返しです! じゃないよ。結構、すごいなこれは。ただまあ、一つのダンジョンとして考えるのならば、難易度的にも存在してもいいのだろう。


 どうしても現実味があるから、現実世界のこととして考えてしまうからダメなんだ。そう、これはゲームで、この世界もただのダンジョン。少々、敵の形がおかしいだけで。


「因みに、この網に捕まったらどうなるんだい?」


「はい、中央政府の元に連れて行かれて、プログラムCのレーザーの時に排除されておけば良かったな、って思うくらいのことをされますね!」


 え、何この子怖い。何、平然と笑顔で恐ろしいこと言っちゃってるの? え、レーザーで消し炭にされる方がまだマシって思えることをさせられるの? 


 一体、誰が治めてるんだこの世界は。仮にもしプレイヤーが捕まったら、どのタイミングで死に戻りさせてあげるんだろうか。


 色々考えると、怖くなるな。考える視点がたくさんあってややこしいが、後輩がこれにハマる理由もなんとなくわかる気がする。


 この微妙にありそうで絶対にない感じとかがいいんだろうな。いずれどこかの独裁国家のあり方を示しているかもしれない。……いや、ないか。


 彼女のことだから、面白さ100%で作ったのだろう。


 でもまぁ、こんな世界には絶対に住みたくはないかな。

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