第156話 落胆と発展


「骨の、従魔たちも、強い……うぅ」


 後輩が項垂れていた。どうやら、あの獣の従魔だけでなく、いかにも弱そうなこの骨の従魔たちまで強かったのがショックだったようだ。


 個人的にはそこまで落胆しなくても、とも思うが、彼女の気持ちも残念ながら分かってしまうのだから、どうしようもない。


 それに、彼には一切の罪はない、というのも救いようのない点だ。彼が明確なルール違反や悪事を働いていればこちらとしても対象が楽なのだが、彼は真っ当に楽しんでいるのだ、楽しんじゃってるのだ。


 だからこそこちら側は泣き寝入りするしかないという事態に陥っているのだ。


 普通、プレイヤーの方が泣き寝入りするものではないか? とも思うのだが、運営という身ではそれも臨撃姿ではないため、いよいよ救われない。


 あぁ、運営というのは、なんと業の深い立場なのだろうか。これほどまでだったとは……


「あ、彼が転移しましたね。次は……近未来世界ですよ!」


「え?」


 君、今まで落ち込んでやいなかったい? もう、切り替えたのかい? ふぇー、最近の若い子は気持ちの起伏が激しんだねー。


 私が一度、彼女のように落ち込んでしまったら、向こう二週間は引きずってしまう自信があるぞ? まあ、メンタルが強いということは賞賛されるべきことだろうから、私はとやかくいうまい。



 とやかくいうまいが、それにしても早いな。一時間どころか数分で立ち直ってしまったぞ?


「ん、先輩、どうかしたんですか? 何かありました?」


「い、いや何でもないぞ」


「そうですか、では、この近未来世界の説明をさせていただきますね! ここは地味に私のお気に入りのエリアなんです! だからしっかり説明させてくださいね!」


「お、おう」


 なるほど。好きなものがやってきてくれたから、それによる打ち消しで彼女の立ち直りが促進されたということか。それならまだ理解はできるな。


「この世界はですね。三、四十年後の未来を想定して設計してあります。しかし、なんだかんだ言って意外と、実際にこの時になってみても、これほどまでには変わっていないかもしれませんけどねー」


「う、うん」


 まあ、確かにその気持ちはわかる。何十年も前から、自動運転ができるようになるって言われ出してはいたが、実際に普及し始めてきたのが、それこそ最近のことだからなー。


 技術の進歩と、それの普及というのはいつもタイムラグがあるものだからな。実際に、この世界を作るだけの技術はもうすでに今この現在にもあるかもしれないしな。


「それでですね、一番の注目ポイントがここ! 道路が一切ないことなんです! 全て、移動手段を輸送用ドローンにすることで、土地の有効活用が測れるんです!」


「え?」


 いや、それはいきなり発展しすぎじゃないか? まだ、自動運転がやっと普及し始めたっていうのに、もうドローンですか……

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