第155話 彼の言動と戦闘


 な、なぜ象だと分かったんだ? 特に手がかりらしい手がかりもないはずなんだが……?


 どこか私が見落としている何かがあるのか? そしてそれを彼が発見したと言うことか?


「なあ、なんで彼は象を倒せば次に進めると判断したか分かるか?」


「いやー、分かりませんよー。勘じゃないんですか? 逆に論理的思考回路が働く瞬間がこのエリアにあるのかって話ですよ。それこそ……あ」


「ん、どうしたんだい?」


「い、いや立方体が通る道を予測することなんて不可能だと思ったんですが、もしかしたら、もしかしたら彼が上からの視点を獲得したことによって、私たちには見えない何かが見えたんじゃないですか? それこそ、些細な違和感が生まれたりするかもしれません」


「なるほど……」


 確かにそれならば、私たちはあくまで挑戦者と同じ目線で見ているから気づいていないが、全体を俯瞰的に見ることで何か分かることがあったのかもしれない。


 もしかして、迷路を辿るように一つずつ頭の中で動かしてみたのかもしれないな。それだとしても十分すぎるほどにすごいことなのだが。


「あ、象を倒しちゃいましたね。二段構造になっていて、第二回戦の蛇もいたんですが、なんか食われて倒してましたよ? 彼って奇抜な行動を取らないと気が済まないのでしょうか?」


 ……ん? ちょっと情報量が多すぎてついていけなかったんだが。まず、あの象って二段構えだったのね、初めて知ったよ? そして、それが蛇でそれも余裕で倒した、と。


 え、食われて? 


 本当に彼は一体何者なんだろう。普通の人間ならば食べられることに一定以上の忌避感というものがあると思うんだが、それを平気でやってのけるあたり、、やっぱり彼は彼なんだと認識させられるよな。


「あ、でも最終的に立方体が集結してきましたよ! これで大きな魔法陣を作って次の階に転送するんですよね? オシャレすぎますよこれは!」


 あぁ、確かにこれはお洒落だ。考えた人にボーナスをあげても良いくらいだ。なんせ、お洒落なだけじゃないところがまた良いのだ。


 この遺跡では、立方体をうまく操作すれば、モンスターとの戦闘をいくらか減らすことができるのだ。


 だが、それをしてしまうと、この最後の最後という段階で飛ばしたモンスターたちが、待たされたイライラで凶暴化して襲ってくることになる。


 通常状態のモンスターを一匹ずつ倒すのと、凶暴化した敵をまとめて相手するのでは比べるまでもないだろう。つまり、ズルはよくないよね、っていう話なんだが。


 彼の場合はもう、よくわからない。ずるなのかどうかも分からないし、彼にとってはこれくらいの敵、別に脅威と感じていなさそうだしな。


「あ、従魔を出しました。しかもいつもの鳥型ではなく、骨の、スケルトンの従魔です」


 っと、また従魔にやらせるのか……彼は戦闘がしたくないのだろうか?


 本当は戦闘がしたくないから、食べられてみたりして奇抜な戦闘スタイルをとっているのか?

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