第153話 新たな着眼点と理由
「うぇ! な、何ですかこれは? さっきまでは全然効いてなかったはずの従魔さんの攻撃が、どれもクリーンヒットになってるじゃないですか!」
これは驚くのも仕方ないだろう、なんせこの私も非常に驚いているのだからな。
自分の体に、稲妻、しかも黒雷というかなり強力な技を使って、雷を纏うことで、体のリミッターを強制的に解除するなんていう芸当、普通のモンスターができることだろうか?
確かに電気振動を送れば強制的に体を動かすことはできるし、通常時とは比べ物にならないほどの威力も出すことができるだろう。
しかし、そんなことをしてはあっという間に体がボロボロになってしまう。現にもう既に従魔自身もかなりのダメージを負っていることだろう。
しかし、その傷ついた体に対してさえ、雷を使うことで無理矢理動かすという、かなり危険な荒技をやってのけている。
生物として、自分の体を守りたいという、自己保存本能が働いていないのか、それともそれすらも突き破る何かが、従魔の中で渦巻いているのだろうか。
人間でもないモンスターにこの真意を問いただすことは不可能だが、この行動はとても人間臭いように感じられる。
従魔になったモンスターはその主人から少なからず影響を受ける、そういう設定ではあるのだが、これほどまでに影響を与えているとなると、改めて彼の特異性というか、脅威を感じることになるな。
「あっ、とうとう倒しちゃいましたよ、従魔さん!? って、めちゃくちゃ体がボロボロじゃないですか! これ、相当無理をしたんじゃないですか?」
「あぁ、これほどまでにモンスターが自ら追い込むというのは本来ならばあり得ない。それこそ、親が子を守る瞬間くらいじゃなかろうか」
勝負に勝ったものの、満身創痍の従魔はそのまま彼に回復してもらい、眠るように、倒れるように戻っていった。
彼が何の為に従魔に戦わせたのかは結局分からずじまいだが、彼が普通の感性を持っているのならば、もうこんな痛々しい姿にはしたくない、そう思うことだろう。いや、思って欲しい。
「それにしても、従魔さんのモナークは彼だった、ってことですね!」
……いや、別にうまくもないからそんな、決まった! みたいな顔をするのはやめてもらいたい。
それに、従魔さんで名前は固定なのか? あれだけの死闘を見せてくれたことに感激しているのか?
もしそうであるならば、毎日、君と死闘を果たしている私にもさん付けしてくれて良いと思うのだが……
予想、これ以上考えても虚しくなるだけだ。
それよりも、従魔とプレイヤーの関係についてもっと知りたくなってきたな。私が知らない他の従魔はどうなのか、またそのモンスターが受けた影響はどの程度のものなのか、などなど知りたいことは山積だ。
彼はいつも私たちにない視点をもたらしてくれる。あぁ、これでまた彼をこちら側に引き入れたほうが良い理由ができてしまったな。
「はぁ、」
全く、もう少しゆっくり生きてはくれないだろうか、スローライフという言葉を彼は知らないのか?
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