第152話 膠着と打開
「先輩、とうとう戦闘が始まりましたよ。彼は本当に従魔にやらせるみたいですね……」
一体何を考えているのか。自分は絶対安全に倒せるというのに、これだとただただ自分の従魔を危険に晒すだけじゃないのか?
「あ、オーガが動き始めました! 腕による振り下ろし攻撃ですね、ですが、これを彼の従魔は回避してそのまま、、え? 尻尾? 尻尾で攻撃しましたよ!? 先輩?」
尻尾での攻撃? 珍しいな。確かに尻尾での薙ぎ払い攻撃とかは、尻尾が長くて硬いドラゴン種ではよく見られるものだとは思うが、このグリフォンみたいな姿をしているモンスターの尻尾攻撃は見たことがない。
見た目上はフサフサしており、とてもダメージを与えられているようには見えないが、どうやら尻尾を硬化させていたようで、オーガはドンキで殴られたような顔になっている。
「え、尻尾を硬化するってどうやってやるんだ?」
「え、そこですか先輩? 尻尾で攻撃したことじゃなくて、なぜ硬くなったか、ということですか?」
「そうだ。尻尾って筋肉はあるのか? いや、流石にあるのだろうが、それはどのくらいあってどの程度自由にできるものなのか? 力むだけで硬くなるということなのか?」
「もう、本当に一度疑問に思ったら止まらないですよねー。まあ、確かに筋肉に力を入れて硬くした可能性もありますが、普通にスキルの可能性もありますよ? モンスターでもスキルは使えますし、それこそ、アイア……鋼の尾、みたいなスキルを所有しているのかもしれません」
「なるほど、スキルか……」
その線も確かにあるのか。っていうかむしろその可能性の方が高い気がする。
「え、それで納得しちゃうんですか? ま、まあいいや。それよりも先輩、頭をクラクラさせていたオーガですが、いよいよ動き始めますよ!」
頭への強打を食らっていたオーガは軽く意識が飛んでいたようだ。相当打ちどころが悪かったんだろうな。
そして、その間一方的に攻撃を仕掛けていた従魔であったが、どうやらボーナスタイムもここで終わりのようだ。
「んーなんか膠着してますね。オーガの攻撃はノロノロしてて当たってないし、従魔は従魔で、攻撃は当てられているものの大してダメージを与えられていませんし、これは長引きそうですねー」
ふむ、だがどこかで風向きは変わるだろう。どれだけ効いていないと言ってもノーダメージというわけではないし、対する従魔はたった一つのミスでやられかねない。つまり、残り時間はそう長くはないということだ。
そして、もしこれを両者のどちらかが理解しているのならば、さらに早く戦況は動くだろう。
「あ、なんか攻撃をしなくなりましたね、従魔さんが。でもなんの為でしょうか? 体力温存ですか?」
モンスターに対してさん付け……それは礼儀正しいに分類されるのか?
まあ、攻撃を辞めた理由として考えられるのは、単純に確実に決まる一撃を準備する為だろう。どうやら、さっきのことに気づいたのは、従魔さんの方だった。
さすが主人が彼のことだけはあるな、と言ったところだろうか。
「あ! オーガに一撃決めちゃいましたよ、従魔さん! どうやら自分で自分の技である、雷を纏って、速さと攻撃力をあげたようです!」
……解決策も、彼譲りなのだろうか?
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