第151話 君主と主従
「あれ、彼が何か依頼を受けようとしてますよ? 帰らずの塔の攻略はもう諦めたんですかね?」
人がどうやって引き込もうか考えていると言うのに、呑気に彼の観察なんかしやがってー、それにこんなタイミングに依頼を受ける彼も彼だぞ、全く。
「それで何の依頼を受けるんだ?」
「えーっと、オーガの里の処理? ですかね。なんか物騒と言うか、この処理っていう言い方がなんとも暗殺ギルドって感じがしますね」
確かに言われてみればそうだな。普通のギルドだったらオーガの里の解体、とかそういう表現になるだろうから、処理、というのは暗殺ギルド独特の言い回しなのだろうな。
「あれ? 現場に到着したみたいなんですけど、、彼が戦いを始めようとしませんね。全て従魔にオーガの処理をさせていますよ?」
ふむ、確かに彼にとっては珍しいことかもしれないが、一般的に考えればさして珍しいことでもないように思うぞ。
「ただ単に、ボスの為に余力を残しておこうという考えなんじゃないか? 取り巻きのオーガ達を従魔だけで倒せるのなら、それに越したことはないだろう」
「そ、そりゃそうですけど、なんか違和感っていうか、そうじゃない雰囲気がるんですよねー」 「そうじゃない雰囲気?」
「あ、ボスが出てきましたよ! えーっと種族はオーガモナークですね。え、このオーガってこの里の長ってことですよね? なのになんでモナークなんて名前なんだろ?」
モナークとは君主とか、王とか皇帝、みたいな意味だ。だから確かに彼女の言わんとすることは分かる。
「担当者が適当にかっこよさとそれっぽい名前でつけたんじゃないか? あるいは、この里でそれこそ皇帝のように振る舞っているとか」
「里の中で皇帝のようにって、なんとも滑稽ですし、民たちが可哀想ですね。小さなコミュニティなのにそこで王様みたいな態度取られるって、何様なんでしょうね」
このオーガモナークを見たこともない彼女から酷い言われようだ。まあ、オーガという種族事態、個体数が少ないから、別におかしなことではないのかもしれないんだがな。
勿論こんなことは彼女には言わない。縁は災いの元っていう昔の言葉があるくらいだからな。
「え!? 先輩! このオーガモナークにも彼は従魔に戦わせるようですよ? なんでですか? 彼ならそれこそ余裕で倒せるでしょう、このくらい」
「な、本当か? 確かに彼なら余裕だとは思うが……」
逆に余裕すぎてこの程度、従魔で十分だと判断したのか? それくらいしか理由が考えられないのだが、それにしては、少しばかり従魔では荷が重いような気もするぞ。
「なぁ、君はこの従魔がオーガモナークに勝てる確率はどのくらいと見ている?」
「そうですねー、半々くらいじゃないですか? 流石に彼と比べると全然弱いですからねー」
やはり、彼女も私と同じ見立てのようだ。そうなってくると、ますます彼の意図が読めない。
一体、なぜ自分が倒すよりも確実でない従魔に倒させようとしているのだ?
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