第149話 長い長い前置き
「ラスボスについて、考える、かー」
これは後輩にスイーツに行った時に言われた言葉だ。彼女も彼をこちら側に引き入れることについて、少しは考えてくれているようだ。
スイーツに無理矢理連れて行かされたのも彼女なりの……いや、ないな。あれは絶対に食べたかっただけなのだと断言できる。
それよりも彼女に言われた言葉だ。
ラスボス、と言われて真っ先に思い浮かぶのは、このゲーム内に限定すれば悪魔、という存在だろう。
人間社会に紛れ込み、ひっそりと悪事を働いている存在で、なおかつ上位個体は精神体で、攻撃力もかなり高い。
強くなるにつれて、この悪魔の存在が徐々に徐々に浮き彫りになり、最終的には全面的に戦う、みたいな流れを想像していた。
しかし、まあ、物事は常に何事もうまくいかないものである。彼によって、即刻バレてしまい、もう何体か討伐すらされてしまっている。
まあ、悪魔の存在が露見しているのは彼だけであるし、彼もまた倒せているのは下位個体だけだ。流石に彼といえど、上位、それこそ公爵級を倒すのには時間がかかるだろうから、まだまだラスボスとしての機能は果たせる、私はそう考えていた。
しかし、それに疑問符を投げかけたのが彼女だ。
ゲーム内に規定の存在を作って仕舞えば、それは確実に攻略される対象となる。これは、彼を除いたとしても変わらぬ事実だし、結局は時間の問題である。
しかし、ゲームという性質上、一度生み出してしまったものは取り返しがつきにくいし、その成長に任せてみても、それはプレイヤーの成長速度に比べるとはるかに劣ってしまう。
そこで、そこでだ。プレイヤーをラスボスに設定してみよう、するとどうだろうか、自動で強くなってくれる最強のラスボスの完成だ。
人間、特にゲームをする者は、攻略を全力で進めて行く反面、心のどこかでは終わってほしくない、と思ってしまう節がある。
完全攻略したいという気持ちの裏側には、覚めることのない夢を見たいという欲求を持ち合わせている。
そして、それを成し遂げることができるのは同じプレイヤーだけなのだ。
確かに、そのプレイヤー、彼には見える世界というものがまた変わってくるかもしれないし、一人楽しめないのかもしれない。
ただ、本来のこのゲームを楽しみ尽くせるのもまた、最前線を一人ぶっちぎっている彼だけだろう。
つまり、彼に本来のこのゲームの楽しみ、というものを引き換えに他のプレイヤーを楽しませるという任を担ってもらうということだ。
しかし、それはこちらの身勝手にも程があるのは重々承知している。だからどうやってこれを実現していくかだが……
「はぁ」
結局どうすればいいのだろうな。答えもこれから行く道も全く見えぬまま、その日は結局、財布が軽くなっただけに終わってしまった。
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