第139話 計画の発端
「あ、彼、なんかしてますよ」
いや、その何かを報告するのが貴方の役目では? とも思ったが、そこはグッと堪える。口は災いの元、要らぬことは言う必要がないのだ。
「ん? 一体何をしているのだい?」
「えーっと、なんですかねこれは……まず死霊魔術でスケルトンを呼び出し、そのまま服従させて、マグマを使って強制進化させた!? ログを見てもやってることがさっぱりわかりませんよ!」
「はい?」
確かに効いているこちらも全く内容が理解できなかった。いや、別に何が行われているか、と言うのは流石にわかるぞ? ただ、どう言う目的で、行われたのか検討もつかないし、その結果何が生み出されたのかも分からない。
「え、結局何が生まれたんだ? モンスターが生まれているのは確かなんだろう?」
「はい、そうなんですが、これは一体……? ん、ラヴァマン? なんだそりゃ」
ラヴァマンだと? 聞いたことも無いぞ、そんな名前。ラヴァは英語で溶岩と言う意味だから、そのまま溶岩人間と言うことなのだろうが……おいおい、安直すぎやしないかい?
誰かがこのモンスターを作成していたのか? それともその場で決められた新種のモンスターなのか? どちらにせよ、こんな突飛もないことを思いつくなんてどんな自由な発想を持っているのだろうか。羨ましいくらいだ。
私が仮に彼の立場だったとして、マグマを使って強制進化をスケルトンにしようと思うだろうか? ゲームを開発する身としては、自由な発想は取り入れたいところだが、これは如何せん無茶苦茶なようにも思える。
しかし、その実、マグマでできている体というのはなかなかに強力なような気もする。こんなことを、我々の想定を軽々と超えてくるようなことを、何度もされたら私たちはどうすればいいというのだろうか。
「もう、いっそ彼が私たちの味方になってくれればいいものを……」
「え?」
「え? 今、私声に出していたのか?」
「はい。それよりも今、なんて言いました?」
「もう、いっそ彼が私たちの味方になってくれればいいって、」
「そう、そう! それですよ! 先輩もたまには良いアイデア思いつくんですね! 彼を止められないなら、それを生かす方法を叶えればいいんですよ! そしたら彼に対する私たちの懸念事項もだいぶ減るでしょうから!」
「え、え?」
まさかだ。まさか声が漏れているとは思わなかったし、あくまで夢見事のつもりで言ったのだがまさかそんなに刺さるとは。
「しかし、そうは言っても簡単にできることでは無いだろう? 彼はあくまで一般市民の一プレイヤーにすぎないのだから」
「それをどうにかするのが先輩の役目じゃ無いですか! そういうこと考えるの得意でしょ?」
おいおいおい、やめてくれよ全く……
❇︎
この時の私には本当に彼が、魔王としてこちら側についてくれることなど知る由も無かったのだった。
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