第131話 ウォーキング凶器
「今、ようやく第七波ですね。同じことを繰り返している彼も彼で退屈そうですが、見ているこちらはもっと退屈ですね、これ」
「まあそうだな」
勝手に見といて何を言う、とも思わないが、まあ事実だし何よりも逆鱗に触れたくないので何も言わない。
「しかし、回復スキルを彼が購入したのはなかなか賢明な判断だった、と言わざるを得ないな。ただでさえ破壊力がある従魔達なのに、無限に働かせられるのは強いな」
「はい、そうですね。しかもメガヒールはINTとVITの差で回復量が決まりますから、なかなかの回復効率を叩き出してますね、これ」
そうか、彼のステータスにはビックリするくらいの補正がかかっているからな。まあ、つくづく彼は最善手を選んでいるように思えるな。
どこまでが彼の計算内、想定内で、どこからが運や偶然なのだろうか。彼を見ているとその境界が非常に分かりにくい。全てが計算通り、と言うことは無いだろうが、ほんと恐ろしい存在だ全く。
「あ、彼が参戦しましたよ! ただ今ちょうど九回目が終わった所ですね。ほとんどを従魔に任せて自分は最後の最後だけ参加するというなんとも効率的というか、従魔を使うのに長けているというか……おそらくこのまま従魔だけでしたら、第十波は越えられなかったと思いますからねー。判断能力も優れている、と言うことですか……」
途中からは彼女の独り言のようになっていたが、その内容はとても興味深かった。彼は判断能力の素晴らしく、従魔に任せられるギリギリを見極めていた、らしい。
私は、上に立つ者として必要な要素はいくつかあると思っているが、その中の一つに、任せられることと、即決の判断能力が必要だと思っている。
部下に任せられることを任せて、自分にしかできないことをやっていかなければ、組織として大きくならないし、一代限りで終わってしまうからな。そして彼はこれをしっかりと行なっている……
そして、即決の判断能力は、常に移ろいゆく戦況、会社で言うと社会情勢にとって必要不可欠だ。確かにこれも部下に任せることはできるかもしれないが、最終的な判断はやはり上のものがすべきだろう。
部下と自分の意見がすれ違っていたら元も子もないからな。それに、自分の判断は自分しか下せない。
こういった観点から見ても彼は人材として非常に優秀なことが伺える。もしかして、リアルの方では会社でも経営しているのだろうか?
まあ、こういったVRゲームでのリアルの詮索はご法度だが、如何せん気になってしまうな。
仮にもし本当に彼が会社なり、組織なりを運営しているのならば、それがどんなものなのか、一度見てみたいものだな。
「あ、先輩、彼クリアしましたよ。いやー、彼が新しく買ったこのスキルも強いですねー。広範囲攻撃ですし、自分は動かなくて済みますし、結構強いですね。それに、並列思考で、花弁の攻撃と自分の武器での攻撃を両方行うこともできて、もはや凶器以外の何者でも無いですね」
うむ、全くその通りだ。いや、彼自身が歩く凶器と言った方がいいだろう。
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