第130話 ナイスなゾンビ
「あ、彼死にましたよ」
「え? 死んだ?」
あれ、苦戦していたとは思うんだが、死んでしまったのか? これはナイスというべきなのか? よくやったぞ、ゾンビ!
「はい、どうやらゾンビに感染したことによって死亡したみたいですね。あ」
ゾンビに感染したら死ぬのかー、まあそりゃそうかー、なんて取り止めのない思考を巡らせていると、彼女が珍しく声をあげた。何かに気づいたのだろうか?
「ん、どうしたんだい?」
「あ、すみません。彼はもう感染しづらくなっていますので、てっきりこのまま塔に再チャレンジするものかと思っていました。しかし違ったようです。どうやら彼は自身の強化をするようですね。恐らくあの物量に再び挑むのは心が折れたのでしょうか」
や、やるなゾンビ。彼を一度でも倒すだけに留まらず、彼に強化の必要性を感じさせるとは……だが、それによって彼が強くなってしまうのはいただけないな。
まあ彼はどうやっても強くなるだろうから、ゾンビは足止めしただけでも十分と言えるんだがな。
「それで、そこでどう強化しようとしているんだ?」
「はい、実はそこが大問題なんですが、彼はあの隠れスキルショップに向かったのです」
「な、何? もしかして始まりの街にあるあの店か?」
「はい。前にも行ったことがあるので、それを思い出したのでしょう。手取り早く強くなるには最適な場所ですね」
そ、そうかー。このお店は、始まりの街なんてさっさと飛ばしてしまうだろうからあえてそこに最強クラスのスキルが置いてあるお店を置こう、というコンセプトの元誕生したスキルショップだ。
もし万が一見つかっても始まりにいる人であれば支払い能力的に無理だろうし、逆に払えるようになった頃には、もう始まりの街にはいない、という寸法なのだ。
まあ、覚えていて戻ってくる、ということも可能なのだが、それを実行しているのは彼くらいのものだ。ってか、彼にしかまだ見つかってすらない。
こう考えてみると、ちゃんと隠し要素を見つけている彼が強いはなんか納得してしまうな。湖のイベント用エリアも見つけているわけだし、色々と見つけすぎだ。
「あ、先輩! 彼が広範囲攻撃スキルを買っちゃいましたよ! ついでに回復スキルも!」
な、なんだとー? 本格的にあのゾンビステージを攻略しにかかっているじゃないか。広範囲攻撃は言わずもがなだが、回復は従魔達に使うことでより効率的に殲滅することができる。
これはもう突破されたな。
いや、一度でも彼を倒せたゾンビ達に拍手を送っておこう。うん、ナイスだったぞゾンビ。
「……先輩、何してるんですか?」
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