第128話 淡い期待
「彼が次の階層に到着しました! この階層は……雪原ですね! しかも、一面に広がる銀世界からたった一羽の白兎を見つけなければならないという、かなり鬼畜なステージです!」
「ほぅ、それは面白そうだな。彼は一体どのようにクリアするんだろうね」
彼は規格外の存在だが、それは戦闘面に関してだったり、考え方、行動の仕方、などに関するものだ。
こういった、索敵能力や運、と言ったものに関しては規格外ではない、はずだ。だからこそ彼のまだ見ぬ一面が見られるかもしれない。
あわよくば、彼が苦戦しているところなんかも……
「先輩! 白兎が見つけられました! タイムは彼がこの階層に到着してから二分です!」
「…………え?」
「スキルの使用ログを見てみると、おそらく気配感知を使用したものだと思われます」
「な!? そういうスキルっていうのは効果が無いようになっているんじゃないか?」
「はい、正確には抵抗判定というものが存在します。その抵抗判定よりも索敵能力が小さければそれは弾かれることとなってしまいますね」
「つまり、その抵抗を上回れば当然いつも通り発動するというわけ、か……」
「はい」
くっそー、一瞬期待したからこそ、、悔しい。期待してしまった自分が悔しい。
まあ、そりゃそうかー。彼は称号の効果で効果が底上げされているし、仕方のないことだろう。
しかし彼はなんの障害も感じることもなく易々とクリアしてしまったのだろうな。本当は抵抗判定なんてものがあるのにも関わらず、その存在すら知ることもなく、素通りしたのだろうな。
「先輩、彼はどちらかというと、困惑している様子でしたよ? これで終わりなのか、と。なんの気無しに使った気配感知ですが、それはモンスターに出会うためで、見つけてやろうという気概すらなかったのでしょう」
「そ、そうか。少しでも苦戦しているところが見られれば、と思った私が浅はかだったな。って、え? 声に出てたのか?」
「はい」
「そうか……だが、それにしてもつくづく彼は規格外だよな。もう、この調子でサラッとこの塔もクリアしてしまいそうだな」
「彼が次の階層に到着しました。ここは、住宅地ですね。ゾンビの階層です」
「うむ、って、え? 住宅地にゾンビ?」
「はい、ベストマッチングでしょう?」
そ、そうか? そうなのか? だがここで否定するのは悪手な気がする。気がするっていうか、確実にそうだ。
「そ、そうだな」
「この階層をシンプルに説明すると、無限増殖ゾンビパニックですね。ゾンビの波状攻撃が延々と繰り返され、挑戦者の心と体を確実に蝕んでいく、そういうステージですね」
お、おうそれはまた恐ろしいステージだな。だが、これもサラッとクリアしてしまうのだろうな、彼の手にかかれば。
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