第126話 洗脳


「薬物中毒!?」


 え、ゲームの中でそんなことが可能なのか? 本当にもし可能ならば、NPCへの影響とかも考えて即刻対応しなければならない案件だぞ?


「はい。その薬物とは、武闘道液糖結晶と言って、蟻たちが糖分として蓄えているものです。食べると、精神に影響をもたらし凶暴化する、という代物で、彼はこれは蟻が食べているのを目撃していたのでしょう。そして、自分もその強さを手に入れる為にそれを口にした、というところでしょうか」


 なるほど、蟻の食べ物なのか。ならば特に普及はしないだろうな。彼が持ち出して、主要NPCを薬物漬けにするのが怖いが、そんなことするような人でもないだろう。


 彼のぶっ飛び具合はそれとはまた違う方向だからな。我々が考え付かないような方向にぶっ飛んでるし、それが誰かの迷惑になると言うよりかは、自分の強化一辺倒だからな。


 逆に安心できると言うものだ。それに、我々が考え付かないようなこと、って言うのは逆に言うと我々が考えついた時点でその可能性は低いと言うことになるからな。


「ち、因みに、それを食べたことによって彼の身に何が起こったんだい?」


 これは一番気になるところではる。NPCには蟻と同じような効果が出てもおかしくはないが、それをプレイヤーにも同じように、とはいかないだろう。


「説明しますね。まず、これを食べると、一時的な全能感に襲われます。これは各種バフがかけられているのと、テンションが高くなるきっかけを与えられているからですね」


 なるほど、物理的に自分のステータスが上がって、尚且つテンションが高くなるきっかけを与えられたら誰でも、って、


「きっかけってなんだ?」


「アレ、先輩は知らないんですか? このゲームにおける精神的誘導の仕方ですよ?」


「精神的誘導? つまり洗脳ってことか?」


「先輩がそれを言ってはいけないでしょう。洗脳ではない、と証明するためにこんな名前までついているんですから」


 あ、なんか思い出してきたぞ。このゲームの中で実際に洗脳が起きていたら悪用されそうだし、そもそも外聞が悪い。そこで、洗脳とは違った手段でどうにか洗脳みたいな効果を生み出せないものかと試行錯誤していたんだったな。


「ああ、徐々に思い出してきたよ。でも一応詳しく教えてくれないかい?」


「はい、ですが、構造自体は非常にシンプルですよ? まず、先ほどきっかけと言いましたが、これは対象プレイヤーに対して自分の声で脳内に声をかけるって言うのが一番わかりやすいと思います」


「ん?」


「頭の中で自分の声が聞こえれば誰しも自分の感情だと錯覚するでしょう? それを利用しているのです。また、その時に、感情増幅効果を発動することで、偽物のきっかけが本物の感情を芽生えさせ、その感情をそのまま大きくさせて現実のものとするって感じです」


 え、なんか普通にそれ洗脳じゃないの?


「まあ、こういう仕組みなので人によって差は出ますし、悪影響も出ませんから大丈夫と言うわけなんです!」


 えぇ……大丈夫なの、それ。







——————————————————

本編でちょくちょく出ている洗脳のシステムについて安全だし、悪用はできませんよ、って言う回答回にしたかったんだけど、普通に悪用できそう……


なんだよ、感情増幅効果って、ま、まあ、あくまでファンタジー、あくまで本編の味付け程度にお楽しみください(^^)

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