第124話 両両生類


 結局、私は後輩から彼が砂漠の階層をどのようにクリアしたのかについて聞くことになった。


「彼はまず最初にウオガエルと遭遇しました。これに酷い嫌悪感があったのか、彼は厭離穢土を使用し、存在を抹消しました」


「お、おぅ」


 彼も中々鬼畜だな。キモいからと言って存在を抹消……ウオガエルも可哀想に。


 まあ、確かにウオガエルの見た目は多少、いやかなり気持ち悪いものになってしまっているかもしれない。なぜ、魚と蛙を足そうと思ったんだろうな。


 それぞれで完結しているのに、それらを融合させることで謎の中途半端さが生まれ、得体の知れない嫌悪感に襲われるのだろうな。


 因みに、カエルがベースのウオガエルと、魚がベースの蛙魚も存在する。恐らく蛙魚もこの階層にいることだろう。しかし、見た目が違うといっても若干であるため、同じく彼は一蹴するだろう。


「そして、彼はそのまま歩き始めたのですが、中々敵エネミーにエンカウントしませんでした。まあ、実際の所、彼の移動速度があまりにも速すぎてボス以外のモンスターとは遭遇できず、ボスは特殊な性質によって見つけられていませんでした」


「特殊な性質?」


 なんだそれは、そんなものあったか?


「はい、ボスはこの階層にプレイヤーが来た時点で常に、プレイヤーの後ろに陣取るのです。プレイヤーが後ろを振り向かない限り、決して見つからない、というわけです。まあ、パーティーやレイドであれば瞬時に見つかるでしょうが、ソロの彼には少しキツい仕掛けだと思います」


「ん、でも彼は一瞬でこの階層をクリアしたんだろ?」


「はい。彼はまさかの方法でこのボスを見つけることとなりました。この階層を走り回って疲れたのか、なんと彼は砂漠の上に寝転ぼうとしたのです」


「はい?」


「文字の通り、そのまま砂漠の海に背中から倒れたのです」


 うぉ、そうか、すごいな。それで、後ろにストーキングしてきているやつに気づいたってわけか。ってか、彼について来れたボスもすごいな。恐らくは仕様という超常の力が働いているのだろうが。


「それにしてもよく、彼は背中から身投げができたものだな。普通の人であれば地面が砂漠と分かっていても少しくらいは躊躇するものじゃないか?」


 フォールバックオン、という英語が「信頼する」という意味であるように、後ろ向きに倒れるのは相当怖いはずだ。それを平然とやってのけた彼は一体……?


 いや、地面が砂漠ということを知っていての行動か? それにしても生理的怖さは拭えないと思うのだが……


「え、そこ? 今の話を聞いて疑問に思う部分ってそこですか?? ちょっとおかしく無いですか?」


 え、まあ彼に関しては色んな面で信頼しているからな。うん。

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