第118話 壁と踏み台
キングミノタウロス戦、これはスキルと称号を封じられる戦いであり、その恩恵をこの世界で最も強く受けている彼にとって、とても厳しい戦いとなった。
彼はステータスすらも称号の効果で上がっており、また、彼の剣技や戦い方もほとんどスキル頼りであった。
その結果、彼は今までにない敗北を喫したのだった。
「これは、なんか嬉しい気分になりますね! 私たちの力で彼を足止めできているんですから!」
「あ、あぁ、そうだな」
でも、なんだろうかこの胸につっかえるような感覚は。どうしようもなく嫌な感じがするのだ。これから悪いことでも起きると言うのか? 何か私が見逃している……?
「なんて気が抜けた返事ですか、それは! 彼がどうにか対抗策を見つけるまでは停滞できるんですよ? あの彼が」
うむ、そうだ、そうなのだが、何か引っ掛かるのだ。
ん、対抗策? あぁ、もうすぐでわかりそうなのに分からない、喉まできていると言うのはまさにこう言うことなのだろう。なんともモヤモヤするし、早く原因を突き止めたい。
「あー、楽しみですね〜、この壁を彼がどう乗り越えるのか、彼は一体どう強くなるんでしょうね?」
「はっ! それだ!」
「え? 何がですか?」
「だから、このキングミノタウロスの試練は彼を足止めさせ、彼を悩ませることだろう。しかし、もし壁を乗り越える、いや乗り越えようとすれば確実に彼は成長する。なぜならスキルと称号に頼らなくなるからだ」
「あ、確かに」
「そう、そしてこの戦いでは彼の剣技の成長だけにフォーカスすることだろう。しかし、この戦いが終わり、本当の彼、という蓋を開けてみると、そこには、剣技とスキルと称号の恩恵のコラボした、今までにない、彼が出来上がってしまうのだ!」
「そ、そうですね」
「今でさえ、強い彼が剣技を身につけたらと思うと……」
これが私の胸につっかえてたモノだったのか。確かに足止めできるということはいいかもしれないが、その足止めの理由によっては、さらに当人をジャンプアップさせる踏み台ともなり得る、か。
彼が剣技というかそれん限らず地力、というものを軽視してくれればまだいいのだが、恐らくこの訓練でそれに気づくのだろうな。
まあ、遅かれ早かれこうなるのだとしたら、これだけ願っても意味ないことなのだろうな。
「あ、先輩、彼が道場に入りましたよ、剣の!」
「な、なにっ!」
それにしても行動が早くないか? さっきキングミノタウロスに負けていたというのに……これが彼の強さの秘訣でもあるのだろうな。
「あ、でもここ、偽物道場ですね」
え、えぇ?
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