第117話 欠伸
「ふわぁーー」
「な、なんですかそのあくびはー! 今は勤務中ですよ? そういうのは一人で暇な家の中でしてください! オフィス内の士気に関わります!」
「は、はぁ」
あくびをしただけでそこまで言わなくてもいだろう、と思うけど。まあ、彼女が本気で言っていないっていうのも分かっている。まあ、彼女なりのからかいって感じだろう。
もしかして、彼の行動に疲れすぎて私に八つ当たりでもしたくなったのだろうか。まあ、それをして彼女の気が晴れるのならば甘んじて受け入れるほかない。
だって、これで反論なんてしようものなら、本当に会社の中の雰囲気が悪くなってしまうからな。それだけ彼女がこのオフィスにとってのキーマンということが分かるってもんだな。
「それよりも、彼の様子はどうだい? 今は何をしているんだ?」
「今、彼はゴーレムにやられていますね。どうやら、あの二段式ゴーレムにやられてくれているようです。これが普通のプレイヤーなら素直に喜べるんですが……」
彼の場合は死ねば死ぬほど強くなってしまうからな、素直には喜べないと行ったところか。まあ、確かになー。こちらの思惑にハマってくれているのはいいが、彼からしたら大した痛手にはなり得ないもんな。
どうやったら彼に対して痛手を負わせることができるのだろうか?
運営を行なっている身としては、こんなことを考えること自体良くないことなのかもしれないが、まあ、それだけ彼が異質なのだ。
もう、私たちはどうにか彼に一泡吹かせたいとすら思っている節がある。まあ、はっきりと口に出しては言わないが、それでもこれだけしてやられていれば、そうもなるということだ。
「あ、彼がチビゴレちゃんを捕まえましたよ! 私、この子好きだからせめて従魔にでもしてあげて、と思ったんですが、まさかチビゴレちゃんの方から断るとは……流石チビゴレちゃん、見る目ありますね!」
後輩は彼のこと、好意的に思っていなかったか? 別にあれがイベントの時限定で私を煽るためだけにそうしたのか。
ん、彼女って彼のことどう思っているんだろうか? そこまで憎んでいたり、嫌がっている、とまでは行かない気がするんだよな。まあ、だからと言って好きっていうオーラも別に出してはいないけどな。
もしかしたら、彼女にとっても悩ましい存在なのかもしれない。私が彼に悩まされたり、胃が痛んだりするのと同時に、心のどこかで楽しんでいるように。
「先輩! 彼が次の階層に行きますよ! 次の階層は……草原です! 相手は、あのキングミノタウロスですね」
「ほぅ、」
キングミノタウロスといえば、スキルと称号の一切を封じられるんじゃなかったか? つまり、彼の素の戦いが見れるってわけだ。
「これは面白い戦いになりそうだな」
「あ、彼死にましたよ」
……そ、そうか。
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