第115話 師匠になる


 私がロケット頭突きなんてネタスキル……と考えていたところ、どうやら彼女にそれが伝わったらしく、


「先輩! なですかその顔は! ロケットスキルは圧倒的な速度で持って頭突きするんですよ? しかもその速度は彼がこのスキルを獲得した時と同じになります。つまり、今しがたあのマレフィックトレントを倒した頭突きをいつでもコピーアンドペーストできるってことですよ!」


「お、おおう、そうだな。コピペできるのならそりゃ強いな」


 自分でも何を言っているかよく分からないまま、彼女の圧に負ける感じで同意した。別にこれは悪魔の契約とかでもないから、今後影響がないことを祈ろう。


 ってか、彼女はそれほどまでに頭突きが好きだったか? あ、確か彼女が一番最初に手がけていたのがあの頭突きというスキルだったけ? 


 そこから熱が出て、色々派生スキルを作っていたが、結局あまり使ってもらえなかったから、彼に支えてもらって嬉しいのだろうか。


 まあ、そういうことなら分からなくもないか。私自身、似たような経験もあるからな。


「あ、先輩、彼が毒キノコで自害し始めました」


「毒キノコ!?」


 もはや驚くべきは彼が自害したことではなく、彼がどのように死んでいるか、ということだろう。しかし、もうそれでも並大抵の理由では驚きようもないが、今回ばかりは些か引っかかった。


 なんせ、彼が二番目に死んでいたはずの毒キノコでまた再び死に戻っているというわけだからな。まあ、全ての死因を覚えているわけではないが、二番目で印象も強いそれはかなり鮮明に覚えている。


「な、なんでまた毒キノコでなんだい? 彼は毒耐性を持っているはずだろう?」


「はい、それなんですが、どうやら彼は貫通というスキルを使っているようでして……」


「貫通!?」


「はい、その貫通というスキルで自身の毒耐性無効を貫通し、自身に毒を効かせているようです」


「そ、そうか……」


 そこまでして毒殺されたいのか? いや、したいのか? まあ、どちらでもいいが、彼は本当に無茶苦茶だな。誰が貫通を自分に向けて使うだろうか。これは前にもあったから衝撃はだいぶ薄いが、それでもだ。


 毎度、驚かずには、突っ込まずにはいられない。


「それで、なんというスキルを獲得したんだい?」


「はい、毒無効の上位互換、劇毒無効、そしてきのこマスターの進化形、茸師匠を手に入れました」


「茸師匠!?」


「はい、なんでもキノコを一眼見ただけでその種類と効果がわかるらしいのです。まあ、そこまでは強くないので良いのですが……」


 確かにそこまで強力な称号というわけではないな。ただ、これからも毒キノコで死ぬのならば役に立つことは間違いないだろう。


 にしても、修行僧から師匠になる前に、茸師匠になるとは…………

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