第114話 ポテトフライ
「え、ポテトフライみたいに食べた? マレフィックトレントを?」
一瞬意味が理解できなかった。そんな、人間この世界にいるのか? って、そもそもそんなこと可能なのか?
「はい、彼は龍化して一生懸命食べていましたね。過食スキルを持っているので際限なく食べ続けられるようで、側から見る分にはそこそこ美味しそうにしてましたよ?
あー、確かに龍化して過食持ってたらいけなくもないか、ってそうじゃない。
「そうか、でもなんでまた木を食べるなんてことになったんだ? 別に食べなくてもいいんじゃないか?」
「もちろんそうです、食べる必要は特にありません。それは、彼が自分の従魔には食事ではなく、戦闘を指示していたことからも明らかです。相手は攻撃しても瞬時に回復するため、彼は自らの手駒だけで無限とも思えるマレフィックトレントのリソースを全て削り切ろうとしたのです」
確かにあれだけ姑息な? 賢い? 堅実な? 手段で吸収を行なっていたらさぞ沢山の生命力を持っていたのだっろう。ってか、第一層から到底ソロ向けじゃないんだが、そこはまあいいだろう。そもそもレイドを組むことを想定してあるだろうからな。
「なるほど、つまりその吸収して溜め込んでいる生命力を削ぎ落とす為に、配下には攻撃をさせ、自分は食事を、ってことか」
「はい、以前も彼が海で龍化した際にはクラーケンを捕食していましたし、恐らく龍化した時の主な攻撃手段が捕食だと思っているのではないでしょうか?」
龍になった時の攻撃手段が捕食だけって、それはどうなんだ? 健全な男の子ならドラゴンブレスとか期待するだろうし、事実それも使えるはずだろう?
それを使わずにただただ捕食するって、どういう神経、育ち方をしているのだろうか。単純に興味が湧いてきたほどだ。
「あ、先輩! マレフィックトレントが花を咲かせましたよ!これは滅多にみられないですから要スクショ案件ですね!」
なぜか彼女は興奮しているが、これはなかなかインパクトの強い光景だ。真っ赤で毒々しい模様がついた花が大きく桔梗のようにぱっくりと咲き、その中心には口がついていてよだれも垂れている。これはなかなか酷い景色だ。
この花に食われてしまったら、かなりの確率でトラウマになってしまいそうな勢いで、悍ましいのだ。
「あ、彼が龍化を解除しましたね! 確かに食べられて補給されたくはないですから良い判断ですね!」
あぁ、そうだな。確かに良い対応だった。元々想定していたのだろうか、迅速な判断で噛み付いた側も望んだ結果が得られなくて開いた口が塞がらない。まあ、驚いているのか、ただ閉じられないだけかはあえて触れない。
それと、今見ている感じだと再生速度が最初の頃よりかは遅くなっているのが顕著に分かる。これは彼の従魔の功績が大きいのだろう。
もう佳境に入ったのか、今まで特別使ってこなかったスキルを彼が使い始めた。乾坤一擲、魔闘練気、そして思念の頭突き、どれも強力なスキルたちだ。そしてそれらのスキルがかけ合わさった状態の彼の一発には流石にマレフィックトレントも耐えきれず……
「あ、彼がロケット頭突きを獲得しましたよ!」
おい、終わり方考えろよー。今は、トレントをビシッと倒して余韻に浸かるところだろー。なんだよロケット頭突きって変なスキルは。
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