第113話 狡猾さと慎重さ


「ち、ちなみに彼はどんな死に戻り方をしているんだ?」


「はい、彼はえーっとですね、 恐らくイヴィルトレントの変異種、マレフィックトレントの能力のHP吸収によって死んでいます」


「そ、そうか……」


 HPを吸収されてどのような気分なのだろうか。どんどん力が入らなくなる感じだろうか。それとも痛みや苦しみというものをちゃんと感じることになってしまうのだろうか?


 こういう点において、彼の右に出る者はいない。なんせ彼は恐らく誰よりも死んでいるだろうからな。どんな苦しみなのか、痛みなのか、感覚なのか、人が普通に生きていては決して知ることができないことを多く知っている。


 それが良いことか悪いことかは抜きにしても、単純にすごいことのように思える。


「あ、先輩、彼の死に戻りが完全に終了しましたよ! 獲得したスキルは……えーっと、え?」


「ど、どうしたんだい? それほど強力なスキルを獲得してしまったのかい?」


「いえ、少しばかり意外だったというか、まあ、先にスキルを言いますね。彼は合計で三つのスキルを手に入れました。一つは吸収無効、これはまあHPを吸収されていたんですから妥当ですよね?」


「そ、そうだな」


 もう、彼女の中で彼が死に戻りによって耐性スキルを足ることは妥当なことになったようだな。最初の頃はかなり荒れていた記憶があるんだが、やはり人とは変わる生き物なんだな。


「そしてもう一つが睡眠無効です。これは恐らく吸収している敵に逃げられないように、対象を眠らせていたのでしょう。その間にHPを吸われていると考えると少し恐ろしいですが」


 相手を睡眠させてからその上でHPを吸収するのか……他に攻撃手段が限られているからだろうが、それにしても、体は大きいのに、狡猾で慎重なんだな。見た目は関係ないか。


「そ、それで最後の一つはなんだったんだい?」


「そそれが、問題のスキルなのですが、洗脳無効、というスキルだったのです」


「洗脳無効!?」


 あの大樹は眠らせてHPを奪い取るだけでは飽き足らず、侵入者の思考を誘導し、その上で眠らせ吸い取っていたのか……到底、人の所業とは思えないが、相手はちゃんと人間じゃないから仕方がないな。まあ、弱肉強食の世界だからね……


「因みに、どういう洗脳がかけられるんだい?」


「そうですね、基本的には休みたい、座りたい、などといった、戦闘が終了したあたりで強く作用するものですね。HPは根から吸いますので、地面に着いていなければ効果をなしませんからね」


 うむ、もうここまで来ると慎重とか狡猾っているよりも性格が悪く思えてきた。誰だこのモンスター設計したの。


「それでそのモンスターはどうなったんだい?」


「あ、彼に食べられていましたよ? ポテトフライみたいにポリポリと」


 ん、うん?

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