第103話 行動原理に対する疑問点


「水中適応?」


「はい、彼が港街で手に入れたスキルですよ。彼は先輩が頑張って何か探していたどれでもなく、これの為にここへきたのですね。

 それに効果もすごいですよ? もともとこのスキルは、遊泳、潜水、水圧無効の三つが統合されたスキルなんですけど、とにかく水の中での行動に補正がかかるんですよ!」


 お、おう、随分とざっくりとした説明だな。まあしかし、実はざっくりとした説明が悪いというわけではない、むしろそちらの方が良いと言えるくらいだ。


 ざっくりとしたスキルというのはそれだけ適応範囲が広いということでもあ理、いろんなところに応用が効くということでもあるのだ。


 実際、今回の水中適応というスキルも水の中にさえいれば後は無条件に強くなれるということである。まあ、それだけ獲得条件が難しいのだろうが、ある意味最終形態とも言えるだろう。


 地味かもしれないが、これはかなり強力なスキルとなるだろう。


 考えてもみて欲しい。本来、水の中というのはそれだけで行動しにくいし、息切れすればダメージすら食らってしまう。そんな中、自由に行動できるだけでなく、行動に対して補正がかかるのだ。周りとの差のつき方が尋常じゃない。


 それに、水中で自由に動けるようになるだけでも足りないのだ。彼は補正がかかっているからな。


「ゴホン、先輩?」


「あ、あぁ、すまない。水中適応の強さについて考えていたんだ。かなり強力なスキルだねこれは」


「そうですよ? それを先輩は無視したんですからね?」


「あぁ、それに関しては本当に済まないと思っている。お詫びもしただろう? それよりも何か言おうとしていなかったかい?」


「そうですよ! そうそう、彼がなんとサイコキネシスというスキルを手に入れてしまったんですよ!」


「サイコキネシス?」


「はい、俗に言う超能力スキルですね。日本語で言うなれば念動ですかね」


「いや、それは知っているのだが、これまた急だな。どうして彼がそのスキルを得るに至ったんだい?」


「それが、私も気になるんですよ。急に魔力を放ち始めたと思ったら獲得していたんですよ。いくら修羅の道の効果でスキルや称号が獲得しやすくなっているとは言え、少し異常な速さでしたよ?」


 ふむ、私はなぜその経緯位に至ったのか聞いたつもりだったが、彼女の話を聞いて逆にそれも気になってきたな。


「彼は確か魔力操作を以前獲得していなかったか? それの影響で超能力に関する補正がかかっていた可能性はある。まあ、システム的にはかかっていなくても、魔力に対して彼が慣れていたのかもしれないね」


「なるほど、確かにそうかもしれませんね。それよりもなぜ急にこんなことしようと思ったんでしょうか?」


 い、いやそれを私は先ほど聞いたのだが……まあ、良いだろう。


「そうだ、そこが疑問だ。彼は別に攻撃手段に困っているわけでもないだろう? にも関わらず、魔力弾、ましてやサイコキネシスなど習得する必要がない。まあ、超能力が使いたくなったとかいう個人的な趣味の問題ならば考えようもないがね」


「そうですよねー、もしかしてサイコキネシスではない何かを得ようとして、その過程でたまたま獲得してしまったとか?」


 うーむ、謎は深まるばかりだ。今後の動向に注目だな。

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