第101話 高難度クエスト
「んパイ、セーンーパーいーー!!!」
「はっ!」
「はっ、じゃないですよ、はっ、じゃ!! 何回話しかけたと思ってるんですか!? それも無駄話じゃなくて、ちゃんとした報告ですよ? さらにその内容も彼の強化に繋がることなんです! それなのに何度言っても返事はなく、上の空、先輩は仕事中に一体何を考えているのですかっ!?」
あちゃー、これはやってしまったな。後輩は話を遮られたり、無視されるのが尋常じゃないくらい嫌いなんだよな。これを行うことは一部で禁忌や大罪と呼ばれるほど罪深い。
なぜなら、たった一度でもそれがあるだけで気分が悪くなり、業務を行ってくれなくなるのだ。この罪を犯した者は迅速に事後処理を進めなければならない。それは、彼女の機嫌をいち早く回復させることだ。
「あぁ、すまない。どうやら寝不足のようでどうも頭が正常に機能していないようだね。これは大変な迷惑をかけてしまったね。せっかく、大事な報告を無下にしてしまうとは、本当に申し訳ない。よければどこかで埋め合わせをしたいのだが……」
一つ、誠心誠意謝ること。二つ、それらしい言い訳を用意すること。三つ、相手にとって迷惑であったことを再確認すること。四つ、相手がしていたことの重要性を確認する。五つ、その罪の大きさによって対価を差し出すこと、六つ、
「本当に申し訳ない」
六つ、誠心誠意、心から謝ること。
この事件対応マニュアルに沿ってきちんと冷静かつ、迅速な対応を行う事ができれば彼女の機嫌は治る、と言われている。今回は……
「分かりました、許してあげますよ。どーせ、夜遅くまでゲームしていたんでしょう? 仕事の前夜にするのはお勧めできませんよ? 今度から気を付けてください」
「はい、もう二度としません」
ふぅ、助かった。どうやら今回はセーフのようだ。まれに対応マニュアルを持ってしても効果がない時があるからな。まあ、それはその人の態度であったり、人間関係による者だろう。ちなみに私は最もこの高難易度クエストをクリアしている者であり、マニュアル作成者でもある。
「もう、それを聞くのは何度目と思ってるんですかー。まあいいですよ、その代わり……」
「はいっ」
「今度また一緒にランチ行きましょうね。お勧めのお店を紹介しますから!」
「はい、もちろんです!」
ちなみにここでのお店を紹介する、というのは行きたいお店がある、という意味であるから間違えないよう、注意していただきたい。
「そ、それで何を報告していたんだい?」
「はあ、ほんっっとうに何も聞いてなかったんですね!!」
そりゃそうだろう。だから私はこうやって怒られたのだし、また今度ランチで少なくない出費を被ることになるのだから。
「なんですかその目は! もう報告しませんよ!?」
「はい、すみません、非常に反省しております」
「ふぅ、もういいですよ、全く。彼が水中適応というスキルを獲得したんです」
「水中適応!?」
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