第97話 弄ぶ者


「彼が、兵長に……?」


「はい、どうやら彼が死者の国で召喚したスケルトン達が現地のスケルトン達と意気投合してしまったようで……」


「それで、彼が兵長になったと言うのか?」


「はい、兵長と言うのは正確に言うと称号ででして、部下、——この場合は従魔ですが——を十人以上獲得するともらえるようで、彼は一瞬でその項目をクリアしてしまったようです」


「な、なるほど……それで効果はどんな感じなんだ?」


「はい、効果は、戦闘に参加している兵の数に応じて、HP、MPが微上昇する、というものですね。まあ、目下の驚異というわけではありませんが、強力だとは思います」


「そうか……」


 確かに、無茶苦茶強いというわけではないが、地味についスキルと言えるだろう。彼は称号の効果でHPとMP以外は上昇しているが、その二つだけは補正がかかっていないからな。それが強化されるのは彼にとって単純な戦力アップだろうな。


 ってか、軽く流してしまったのだが、現地のスケルトンと意気投合するって何事だ? 恐らくイベントでも使っていた、死霊魔術の召喚からの、服従で獲得した従魔だろう。


 それが意気投合とは何してるんだよ全く、敵なら敵としてしっかり振る舞ってほしいものなのだが。


 まあ、敵のモンスターにも自律的な思考回路が搭載されているから、我々がどうこう言えることではないのだが、それでも、なあ、敵だぞ? ま、まあいいのだがな。


「あ、先輩、彼が強制進化してるんですけど……」


「ん?」


「え、彼、今さっきゲットした十体のスケルトンをまとめて強制進化させることでなんか一体の禍々しいモンスターを生み出しているんですが!?」


 はい?


「彼は十体のスケルトンを一体のモンスターとみなすことで強制進化を発動し、魂も加えることでただのスケルトンが凶悪な一体のモンスターに成り果てたのです!」


「ん?」


「だーかーらー!」


「いや、もちろん君の言っていることは理解しているつもりだ。ただ、それをしてしまうと、彼が折角、獲得した兵長という称号が死に称号になるのではないかな、と思ってね」


「あ……」

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