第98話 騒乱のオフィス
「あっ、先輩、彼が従魔に乗ってどこかへ飛んで行きました。死者の国は攻略しないのでしょうか?」
え、そうなのか? てっきりこの死者の国も爆速クリアされると覚悟していたのだが、一命を取り止めたのか。
まあ、死者の国のボス戦はかなり手を入れて作ってあるから、いかに彼とはいえ、一人であれば苦戦するだろう。……無理ではないだろうがね。
本来はパーティなり、レイドを組んで攻略するものなんだぞ? それを辛勝とはいえ、一人でクリアできる方がおかしいだろう。まあ、今回は先延ばしにになったから見れなかったが、次彼が来た時は楽しみだな。
「ん、となると、彼はどこにいったんだ? 攻略を放り出していくほどだ。かなり重要な場所に行くんじゃないか?」
「それなんですが、どうやら彼は港街に向かっているようです」
「港街!?」
あそこに何かあっただろうか、いやまあ、港はあるだろうが、彼が攻略よりも優先したのだ。必ず、必ず何かあるはずだ。
確か隠し要素、隠しクエスト、色々用意はされていると思うが、それのどれかがバレたというのか? それとも何か用事? ここでしかゲットできないアイテム? それともここでしか遭遇できないモンスターか?
不味い、どーも嫌な予感がする。何もなければいいが、何もないことが今まであっただろうか。これは確実に何かある。そして、もし何かあるのならば、早急に対処した方が良いだろう。
「おい、君は港街でしか獲得できないアイテムを洗ってくれないか?」
一人の職員を呼び止めて、お願いをした。そして、別の職員にはモンスターを、私はクエストや隠し要素について洗いざらい調べていた。彼女にはいつも通りの監視を頼んでいる。有事の際、彼女ほど迅速に状況判断、分析をできる人はいないだろう。
まあ、冷静沈着に、とは行かないがな。まあ、その力は本物だから多少のことには目を瞑るべきだ。
私はいくつかの隠し要素、クエストを洗っていたのだが、彼が関係してそうなものは見つけられなかった。
「報告します! 港街限定のアイテムの中に目ぼしいものは見つかりませんでした!」
「同じく、モンスターも同様です。しかしまあ、彼は独特な思考回路を持っているため、我々じゃ思いつきもしない行動に出る可能性が高いです。つまり、我々が脅威と感じなくても、彼がそれを脅威に変える可能性があります」
「う、そ、そうだな。報告感謝する」
確かに職員が言っていることも真っ当だ。彼の考えや思考回路が理解できるとは思えない。つまり、我々じゃ対策のしようもない、ということだろう。
しかし、それでは、それでは我々が負けたみたいじゃないか。それに、対策をしようとすらしなければ、私たちの存在意義が薄まってしまう。
「先輩! どうも彼は今回ゆっくりと移動しているようです。この速度ですと、恐らく後十分ほどは到着までに要するかと思われます」
「分かった。ありがとう、私はもう一度隠し要素について洗ってみる」
探せ、何か、何かあるはずなんだ。彼が攻略を差し置いてまでここに来る理由が!
「はっ! これだ!」
スキル選定人、スキルを統合し、さらに強力なものにしてくれるNPCだ。恐らく彼はこれが目当てでここまで来たのだろう。そうとわかれば……
「先輩! 彼が到着しました!」
な、一足遅かったか、後一歩というところで、、悔しい。
「あ、彼そのまま海に飛び込んで行きましたよ? もしかして泳ぎたかっただけですかね?」
え? えぇ……
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