第91話 捕獲者と科学者
「先輩! か、彼が西の森で捕まってます!?」
何事かと思えば、一大事だった。え? 彼が捕まってる? 誰に? どうやって? そりゃ語尾が上がるのも頷ける。
「か、彼って彼だよな? ……どうやって?」
「驚き、ですよね。詳細に説明させて頂きます。それは彼が西の森に歩み始めた時でした。幻覚を見せられ、眠気を誘われたのでしょう、彼は昼寝をしてしまいました。
すると、どこからともなく蜘蛛が現れ、彼を糸でグルグル巻きにしてしまいました。体だけでなく、全身を巻かれていましたので、彼でなければ恐らく死んでいたでしょう」
な、なるほどそういうことか。誰か別のプレイヤーに捕まったのかと思ったぞ。まあ、確かに彼は彼以外には捕まらなさそうだしな。
なんか、モンスターに捕まったとなると急に安心したな。情報漏洩の心配もないし、彼の場合、モンスター相手ならどうとでもなるだろう。ふぅ、いい大人が動揺してしまったな。
「あ、彼が従魔を召喚して拘束を解きました!」
ふむ、だろうな。それに、従魔を召喚するというのはかなりの最適解だろうな。なぜなら、、
「あ、彼が逃げ……られてません! あ! 死んじゃいましたね」
ま、マジか。今、彼の動きが明らかに不自然になったな。確か、蜘蛛の王は特殊な能力を持っていたはずだ。恐らく、麻痺の魔眼だったか?
ん? しかし彼は麻痺無効を持っていなかったか? となると、彼の不自然な動きは魔眼によるものではないのか? では、何故?
「彼はどうしてあのような動きになったのだ?」
「はい。恐らく、不可視の細い糸を巻きつかれたのでしょう。関節の至る所に巻き付かれて動きが阻害されていましたね。ですが、そのどれもが的確な位置で、彼も気付いてなかったようですね」
なるほど、不可視なほど細い糸というわけか。配下も沢山いるだろうし、恐らく自分ではない小さな蜘蛛にでも巻き付かせておいたのだろう。
「あれ? まだ彼は死んでませんね? どうしてですか?」
ん、死んでないのか? あれだけの行動阻害を受けてこれだけの蜘蛛に噛み付かれれば流石の彼でも死ぬと思うのだが……
「「あ、」」
そうだ。彼は先程物理無効を手に入れていたのだった。まさか彼女とハモるとは思っていなかったのだが、彼女も私同様忘れていたのだろう。
「あ、彼が爆炎魔法を撃ちました」
彼が反撃の為に撃った爆炎魔法は、クラスターボムというものだ。この爆炎魔法は基本的に現実の爆弾をモチーフに作られているものが多い。
その中でもこのクラスターボムというのは、その名の通りクラスター爆弾が元になっている。この爆弾は容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載したもので、広範囲に渡って攻撃することが可能なのだ。
火に弱く、数も多い蜘蛛に対してはかなり良い選択と言えるだろう。
そして彼は幾度となく、その魔法を撃ち続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます