第89話 脳震盪
彼が頭突きによって獲得した、四つのスキル、衝撃、振動無効、思念の頭突き、そして即死耐性だ。
衝撃と振動に関しては木に頭突きしたのだから分かるだろう。そして思念の頭突きは彼なりに色々考えながら頭突きをしたのだろう、その中身は非常に気になるが、それは知り得るものではない。
だが、その中で即死耐性は少し歪というか不自然だ。何故か無効ではなく耐性であるし、そもそも彼は即死をしていただろうか?
無効ではなく耐性であることに疑問を持つこと自体、おかしなことなんだが、彼の場合においてのみ、このような疑問が生まれてくるのだ。
彼はそもそも即死することが不可能なのだ。それは称号の効果によるものだ。しかし、何故か即死に対する耐性を得ている。それは、彼が頭突きの中で即死を経験しているということを示す。
それと同時に、衝撃、振動は無効を獲得していることから、即死に関しては毎回起こっていたわけではない、ということが伺える。なんせ、毎回即死しているのならば、他の二つ同様、即死無効というスキルを手に入れるはずだからな。
となると、彼は本来、即死できないにも関わらず、何回かに一度は即死をしているということになる。
これは謎が深まるばかりだな。一度前提を見直してみよう。
彼の即死できない、というのを疑ってみる。彼の即死不可というのはある一定の条件下でおいてのみ発動される。それはHPが満タンの時だ。その時に限ってのみHPを1だけ残して生き残ることができる。そして、彼の自動回復がまた彼のHPを全回復させるのだ。
つまり、これで決して死なない体の出来上がりというわけだ。
しかし、これには抜け穴がある。そう、自動回復のラグだ。なんせ自動回復は常に発動されているわけではない、二秒におきという感覚があるのだ。
ということは、彼は二秒間は死ぬことができる体を所持することになる。
もし、そこで彼が木に頭突きをするとしたら……即死は十分に考えられるな。
頭突き、頭突きと言っているが、即死の理由は恐らく脳震盪、それもセカンドインパクト症候群というものだろう。
本来であれば、彼は頭を木に打ち付けダメージを食らっているだけなのだろうが、この脳震盪というのは、複数回繰り返すことで死に至るリスクが高まる。現実ではそこまで死ぬことはないが、それでも死ぬ危険はある。ゲームであるならば尚更だ。
つまり、彼は木にぶつかる。HPを1だけ耐える。再びぶつかる。そしてここで分岐するのだろう、そのままHPがゼロになって死ぬパターンと、確率でセカンドインパクトを起こし死ぬパターン、この二つに分かれるのだ。
そうであるならば、彼の即死耐性というスキル獲得にも合点がいく。うむ、我ながら良い考察だな。
それにしても脳震盪で即死とは気をつけねばならないな。なんせ……
バチんっ!
「先輩、何ボーッとしてるんですか! 彼がスキルを大量取得したんですよ!? 何か対策はないのですか?」
人類は常に脳震盪のリスクを抱えているからだ。脳はとても重要な器官だ、大切にしなければいけない。
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