第88話 トチ狂い
「先輩! か、彼が堂々巡りトチ狂い始めました!」
おいおい、仮にも女性がトチ狂うなんて言葉使うなよ。それに、彼が狂っているのは別に今に始まったことではないだろう。
まあだが、それをわざわざ私に言ってきたというのはそれなりに理由があるのだろう。
「どうしたんだ? 彼が何かしたのか?」
「はい、彼がなんか急に木に向かって頭突きを始めたのです!」
はぁー……頭突き、ねぇ。そうきたか。
「なるほど、とうとう頭突きを始めたのか」
「え、先輩もしかしてこのことを予測していたんですか!?」
「ん? いや、別に予測というほどではないが、もしかしたら、と思っていただけだ」
まあ、私ほどになってくるとこういった予測もできるようになるのだ。因みにこれは彼が頭突きを獲得した段階でもう既に予測していた。所謂年の功ってやつだ。
「じゃあ、先輩も彼と同類、つまり狂ってるってことですね!」
彼女は私に向かって満面の笑み、その言葉を発した。
「え?」
「だから、先輩は彼が木に頭突きするなんて頭おかしな行動を予測できていたんですから、先輩も同類ってことですよ!」
いや、別に言葉の意味が理解できなかったり訳ではない。いや、理解できたのだがその内容が理解できなかったのだ。あれ、これは私が理解していないのか?
何故か私が混乱しているのだが、普通、先輩に対して狂っているとか言うだろうか?
いや、彼女が普通じゃないのは重々承知しているつもりだ。しかし、しかしだな、彼と同類だとか言うかね? しかも満面の笑みでだ。
私は少なからずショックだぞ。
「そ、それは違うと思うが。話題を変えよう、彼はそれによって何かスキルなりを得たのか?」
「あら、話題を変えるんですね? まあいいか、彼は木に頭をぶつけて死にまくりました。本当にヤバイ人ですよね、こんな発想普通の人なら絶対に出てきませんよ。
そして、その結果彼はスキル手に入れました。しかも四つですよ? 本当にどうかしてますよね」
何故か雰囲気がいつもの後輩と違うような気がするのは私だけだろうか。まあ、気のせいだと信じたい。取り敢えず話の続きを聞こう。
「それで、それはれどんなスキルなんだい?」
「はい、衝撃無効、振動無効、即死耐性、思念の頭突きという以上四つを獲得しました」
「即死耐性……?」
「そうなんですよね、衝撃無効や振動無効はまだ分かりますが、即死耐性はなぜ獲得したのでしょうか? そこに少しばかり謎が残りますね。後は、思念の頭突き、どんなことを考えながら頭突きをしたらこんなものが貰えるのでしょうか」
確かに、思念の頭突きに関しては確かにそうだな。彼がどんなことを考えていたのか非常に気になるな。
だが、即死耐性については少し思う所があるな。
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