第87話 質問力
「せ、先輩!!」
また後輩からだ。なぜ、彼はこれほどまでに取り上げられるのだろうか? 普通のプレイヤー、普通の人間ならば毎度毎度そこまで取り上げるほどのことなんてでないはすだ。
これほどまでに、人生やゲームが充実して楽しいものとなっているのならば、それはそれでいいのだろうが、それにしても多すぎだ。少しはこちらの身にもなってほしい。
「それで、どうしたんだい?」
「それでって何がそれでなんですか? まあいいです、それよりも彼に接触したプレイヤーが現れました、それも情報屋クランの人物です!」
「なっ……!?」
ま、まさか遂にこの時がやってきてしまったのか……
彼に接触を図るプレイヤーは多かれ少なかれ出現してくるだろうとは予測していたものの、いざこうして現れると気持ちの準備ができていない。
彼が何を聞かれて、どう答えるのか、それによってこれからのゲームが大きく変わってくる。しかも、その対価はお金だ。彼はデスペナルティによって常にお金が不足しているため、それに目が眩めばいくらでも言ってしまうかもしれない。いや、その可能性はかなり高いだろう。
「あ、先輩、彼は一つだけなら質問に答えるそうですよ」
一つだけ、か。これはいいことなのだろうか。まあ、欲を言えばなにも言って欲しくはなかったが、最小限に抑えられるのであれば悪くはない。
しかし、その一つで何を言うかが問題だ。仮にとても抽象的な質問をされた場合に、彼が色々と答えてしまうかもしれない。例えば、そうだな「強さの秘訣はなんですか?」みたいな問いであれば色々答える余地が生まれてしまう。
となると、この一回限りの質問タイムは聴く側の、情報屋の手腕にかかっている。どのような質問でいかに答えさせられるか、その術をその情報屋が身につけているかどうかの賭け。
ん? これはかなり難しいのではないか? 仮にその術を身につけていなくても、一つは有益な情報が露出してしまうのだからな。これはまずいよな。改めて考えれば考えるほど不味い。何がバレても不味い気がしてきた。
「先輩! 遂に情報屋が質問しました! その内容は……「好きなモンスターは?」です!!」
は?
好きなモンスター?
な、何故それを聞いたんだ? 好きなモンスターが分かれば他の何が分かると言うんだ? もしかして好きなモンスターによってその人の何かが分かる診断表みたいなものが作成されているのか?
何故だ、全くわからない。何故その質問をしたのか、何故、それをチョイスしたのか。それならば無難な質問の方がまだ良かった。そうすれば、どの情報が出回るかが分かるからな。
しかし、今回の質問ではそれが分からないのだ。何が流出しているのか分からないのが一番怖いな。うーむ、やりよるな情報屋よ。
「あ、先輩、彼はハゲタカが好きと返答しました」
お、おうそうか。
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