第85話 情緒
「先輩、不味いです」
オフィスに戻ってくるなり、開口一番がそれかよ。これで寿司が不味かったですとか言った暁にはもう、決してランチは奢らない。別にディナーは奢るという意味ではないぞ?
「どうしたんだい? どこか具合でも悪いのか?」
「いえ、そうじゃなくて、私たちがお昼に行っている間になんと、彼が、彼が悪魔を倒してたんです!! しかも三体! そしてそのうちの一人が準男爵でスキルを持っていて、その悪魔の心臓を手に入れた彼が、そのスキルを手に入れたんです!!」
もう、日本語がしっちゃかめっちゃかだ。興奮しすぎだろう。しかしまあそれでも分かる所が日本語の凄い所だよな。まあ、日本語だけではないがな。って、
「え? 今なんて?」
「だーかーらー、彼が悪魔特有スキルを手に入れたんですーー!!」
「はい?」
悪魔特有スキル、通常では手に入れづらい、もしくは手に入れることができないスキルのことを指す。つまり、悪魔を倒すことによってのみ手に入れられると考えてもらってよい。
彼女は、そんなスキルを彼が手に入れたと言っているのだ。
だが、そんな訳ないだろう。確かに彼は悪魔を倒すことができるかもしれないが、悪魔特有スキルというのはただ倒せばいいと言うわけではない。
倒した悪魔から心臓を抜き取り、それを研究所にもっていくことで、解析し、スキルを獲得することができるのだ。
……ん? 研究所って、え?
「なぁ、彼って研究所にもう到着してるんだったか?」
「はぁ!? 何言ってるんですか先輩!! 彼が研究所に着いたのはランチに行く前じゃないですか! それで先輩が指揮取ったの忘れたんですか? それに、そうじゃなきゃスキルは獲得できないでしょーが!!」
しょーが……しょーじゃった、しょーじゃった。すっかり忘れておったわい。
しかし、彼はどのようなスキルを獲得したのだろうか。
「それで、それはどんなスキルなんだい?」
「そ、それが……彼が手に入れたスキルはなんと、【強制進化】というスキルなんです」
「強制進化ぁ!?」
それって、私が一番好きなスキルではないか! 好きな素材を使って、好きな従魔を好きなモンスターにできるという最高のスキル!!
私が一番熱をいれて開発したスキルでもある! そ、それを彼が手に入れてしまうとは……
まあ、それはそれでありか。十分に活用してくれるのであれば嬉しい限りだ。
まあ、私が親みたいなものだからな。この旅立ちというものは嬉しいものだ。しかも、よく見知った相手の元へ行くというのからば尚更だ。うん、強制進化に幸あれ。
「先輩、心の声漏れてますよ!? ってか情緒大丈夫ですか? かなりやばいですよね? 知り合いに精神科医いるので説明しますよ?」
え、どこから聞かれてたんだ?
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