第80話 革新的方法


 ん? ちょっと待てよ、この爺さんって、どんなことさせるんだっけ?


「なぁ、ここでは何をしたら何があるんだ?」


「先輩、日本語くらいまともに使って下さいよ。ここでは、あのマッスル爺さんに触れることができたら、強力スキルを一つもらえるんです。でもいかに彼といってもあのチートジジイの防御なんて超えられないんじゃないんですか?」


 ふふふっ、まあよかろう。この後を見れば分かることだ。


「お!? これはもしかしたらもしかするんじゃないんですか!?」


 初撃を受け止められた彼を見て彼女は興奮していた。まあ、ほとんど結果は決まっているようなものだ。


 まあ、一応爺さんについて説明しておくと、彼がスキルを発動すると、彼の周囲の時が止まるのだ。正確にいえば彼に近づけば近づくほど時間の進みが遅くなる、と言った方が分かりやすいだろうか。


 その為、いかに頑張って近づこうとしてもスキル発動時の時間でほとんど固定してしまっているため、触れることができない、ということだ。


 ここで一つ裏話をしておこう。こんな無理ゲークリアできるわけない、と思った輩もいることだろう。そんな人たちの為にここでこそっとそのクリア方法を教えてやろう。


 まあ実際はとてもシンプルな方法だ。彼に近づけば近づくほど時間の進みが遅くなる、というだけで実際は超低速だが時は進んでいる。しかし、時は止まっていないのだ。つまりしんどい、辛いだろうが、触ろうとし続ければ良い、ということになる。そうすればいずれは到達できるのだ。


 そしてそう、これを聞いた人ならわかると思うが、彼ならこれをクリアするのは間違いない、なぜなら何時間と瞑想しており、自分が死ぬ為なら手段を選ばない彼が、ただ待つだけでクリアできる相手に遅れを取るわけがない。


 彼なら確実に、そう間違いなく確実にクリアできる。これは揺るがない。



❇︎



「は、はぁああああーーーー!!??」


 ふっ、どうやら彼がクリアしたことに対して驚いているようだな。まあ、これも経験なのだ。彼女が私のレベルにくるまではかなりの時間がいるだろうな。


「せ、せ、先輩! か、彼、あり得ない方法でクリアしましたよ!?」


 私は見ていなかったので、後輩が興奮した様子で報告してきた。


「彼は何度も挑戦していたのですが、いずれも無理だったようで、彼は何を思ったのか、ギロチンカッターという即死スキルで、あの爺さんを殺したのです!」


「は、はぁ!?」


「そして、彼は爺さんを蘇生して、無事クリアしたということです」


 な、なんということだ。そ、そんな奴がいるのか? 触る為に容赦なく人を殺すなんて普通の人間じゃないだろう。


「そ、そうだったのか……」


「更に、爺さんが感銘を受けたのか、クリア報酬が三倍になったのです!!」


「は、はぁあああ!?」

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