第77話 運営公認
「……先輩、私たちは今何を見せられているのでしょうか」
「私が聞きたいくらいだよ」
私たちは件の彼の行動を見ている。
しかしその行動というのが異常なのだ。何故か分からないが、砂漠の流砂と呼ばれる場所に自ら入り、その中で何もしていないのだ。いや、瞑想をしているのか? とにかく、常人では考えつかないようなこと、考えついても決して行わないと断言できるようなことを平然としているのだ。
何が目的なのだろう。常に私たちの中にその疑問符が浮かんでいた。しかし、ある瞬間にその謎が解けた。それは……
彼が死んだのだ。
なるほど、彼は死亡数稼ぎの為にこんなことをしているのか。なんとも恐ろしい。まあ、よく考えたら分かりそうなものだったかもしれないが、それすら見失ってしまうほどの彼の行動の特異性が際立ったのだ。
❇︎
どのくらい時間が経ったのだろうか。何故私たちがこうして彼の死亡を見ているのかなぞだが、今回は暇だったし、良いだろう。そして恐らくだが、我々二人とも彼がどんなスキルを獲得するのか気になっていたのだろう。
まあ、彼女のことは正直分からないが、私の場合はどんなスキルを獲得するのかこの目で見てみたかった、というものはある。
ちゃんと途中トイレ休憩も挟み、万全の体制でその時を待つ。そして、遂に、その時が……
ーーースキル【窒息無効】
スキル【泥雪無効】
スキル【解脱】を獲得しました。
「「おぉーー」」
代償にした時間のせいだろうか、彼がスキルを獲得した瞬間、二人の口からでた言葉は感嘆の声だった。
まずは窒息無効、これは彼が土中で窒息死したということだろうか。このスキルによって窒息死しなくなるということは、首を絞められてもしなないということだ。もう、もはや人間ではないよな?
その次が泥雪無効。これは今までの無効スキルの中ではかなり地味だが、地味に役立つスキルだな。泥や雪の地形を無視することができるのだ。足を取られることもないため、普段と変わらぬ動きができ、相手もその場にいる場合では自分だけが圧倒的に有利になれる。
そして最後が解脱だな。解脱ってなんだよ、と言いたくもなるが、このスキルはほとんど戦闘的な効果はないと言っても良い。ただ、俯瞰の視点を手に入れるため、常に冷静になることで、戦闘で有利に働くかもしれないな。
そして、このスキルは断食と共に仙人になる際に必要なスキルだ。彼がどこまで知っていて、何処を目標にしているかは謎だが、これからの彼の行動が気になるな。本当に仙人になるのだろうか?
仙人という職業はそれこそエンドコンテンツのようなものだ。最終職業でもある。それに辿り着くということは……
いや、考えるだけ無駄だな。なるようになるか。
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