第66話 悍しい現状


 ふぅ、彼のログはまだまだ恐ろしいことになっている。まだバーサークについてしか処理していない。この次はなんと、称号が二つも続いている。だが、ここは休憩ポイントなのだろう。二つともフレーバー要素が大きく、そこまで強力な称号という訳ではない。


 だが、この次はエクストラクエスト、が進行しているのだ。


 このエクストラクエストについて説明しておこう。エクストラクエストとはエクストラ、とついてある通り本来では受けることができないクエストでありなんらかの条件を満たすことによってのみ受注が可能になる、というものだ。


 彼は悪魔を一体、倒したことによって悪魔への挑戦権を得たという訳だ。そもそも悪魔というもの自体がプレイヤーが一致団結して倒すものであって、そのエクストラクエストも複数人で攻略されることを想定してある。


 しかし、そのトリガーとなる悪魔を一人で倒してしまった彼は、もちろんそのクエストも一人で受けることになる。普通に考えれば何を無茶なことを、と思うかもしれない。なんせ複数人のパーティやレイドが前提のクエストにソロで挑むなんて無謀すぎるだろう。


 だが、彼はそれをひっくり返してしまうポテンシャルがあるのだ。そして、そのポテンシャルが十全に活かされて、もしも彼がクリアしてしまったら、と考えると恐ろしいのだ。なんせ複数人想定の難易度というからには報酬も複数人を想定してある。


 それらを一人で全て享受することができるのだ。一人でもらうには考えられないほどのものになってしまう。複数人で分けても十分な量であるからだ。そして、彼はクリアをしてしまうのではないか、という予感がヒシヒシと私の頭に押し寄せてくるのだ。


 恐ろしい。ただその一言で事足りるのだ。


 そして、これはまだまだ二番手なのだ。ラストにはもちろんラスボスが控えているのだ。しかも、ラスボスに相応しすぎるものが……


「しゅ、修羅の道……」


 おっと、彼女が再起動したようだ。それでもまだまだ万全な体調とは言い難いがな。


 そう、ラスボスは修羅の道なのだ。しかも、修羅の道Ⅲ、ラストなのだ。今まで彼はⅠ、Ⅱを歩んできたのだがこれで最後だ。そして、これを歩み終わった時に、仙人に至る道へと繋がっていく。


 そもそも修羅の道というのは、経験値増加と称号、スキルの効果をアップさせるため、その恩恵が以前よりも大きくなるというだけでも、恐ろしいことなのだ。彼はスキルと称号の上に立っているのだからな。


 しかし、それらのいつもの恐怖に加えて今回は仙人に至る一歩手前まで来てしまった。という一大事も起きているのだ。


 仙人なんて、早い所ではない。エンドコンテンツにすらなりうる要素だ。名前の通り簡単になれるものでもないのだ。それをまさかこんな短時間で爆速で駆け上がられるとは、想定外というか、想定する必要性がもはや感じられなくなるレベルだ。


 どうすればいいんだこれは? 先のイベントでまだまだ露見するのは先だ、とタカを括っていたのだが、そんな悠長な考えではいざ露見した時に大変な事態を生むかもしれないぞ? どうにか、どうにか上手く収める手立てはないものか……


 彼、どうかもう少しゆっくり生きてくれ。


 あまりにも、あまりにも生き急ぎすぎてはないかい?


 まだまだ若いのだろう? 

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