第53話 拳による抵抗


「先輩!! 彼らのところにプレイヤーが押し寄せてきます!!」


 イベントの予選終盤、戦闘フィールド縮小により、中央にいた彼らの所へ生き残っているプレイヤーが殺到してきた。中央にくるプレイヤーは正しく背水の陣でかなりの覚悟を持って攻めてきているようだ。


 彼からするとそれだけでも厄介な相手だろうに、それが倒しても倒してもやってくるのだ。残り人数は約十名ほどだが、彼からすると終わりのないように思えるかもしれない。


 そして先ほどまで彼と戯れていた彼女は押し寄せてくる大群にも動じず、同じ構えで守りきるようだ。彼の猛攻を防ぎきった彼女ならおそらく最後まで生き残ることができるだろう。


 さて、彼はどうする?


「先輩、彼は気配感知、集中、未来予知、高速思考、筋力増強の五つを展開しています!」


 おお、なかなかに彼も気合を入れているといった様子だな。嵐の前の静けさというものが完全に出来上がっている。今まさに大きな衝突が起きそうで見ているこちらもワクワクするほどだ。


 おっと先ずは一人目、ハンマー使いの登場だ。これに対して彼はもちろん拳で抵抗する。重たい武器をもって鈍重な動きの相手にヒットアンドアウェイで攻撃していっている。相手が攻撃しようとする前に五発は殴っていないか?


 そうやってハンマー使いを倒した思ったらお次は二丁拳銃の相手だ。初撃を見切って避け、接近し自分の領域に持ち込みそこからは銃も使えなくさせて、一方的に攻撃して倒した。これは鮮やかな手際だったな。


 お? 次は挟まれているようだぞ? 片や槍使いでもう片方からは両手に短剣を持った軽戦士がやってきている。これはかなりピンチじゃないのか?


 それに対して彼は各個撃破を選択したようだ。槍使いに対しては拳銃使いと同様に接近することで一方的にリーチのアドバンテージを得て殴りつけまくる。短剣使いに対しては相手も身軽であるためそれに対してカウンターで反撃していく。


 相手を倒すのに手数が少なくなってきていると思ったが、恐らく彼のスキル蓮撃が継続して発動しているため、彼の一発一発の拳の重みが凄いことになっているのだろう。


 おっと、次はいよいよ三方向から彼の所に殺到している。すぐ後にはあと五人ほどまた向かってきているぞ? これは流石にやばいか?


 そう思って彼の方を見ると、彼は目の焦点がブレている気がする。そう思った瞬間、彼は何かに取り憑かれたように飛び出した。そして、蓮撃で高まりまくった拳で相手を殴りつけまくった。悪鬼の如く怒涛の攻撃を繰り出し、あっという間に相手プレイヤーを殲滅してしまった。



「Dグループの予選が終了しました。予選通過者は決勝に向けて準備をして下さい」



 あ、終わった。彼は無事全員倒したようだ。あと盾使いの少女も残っている。あと一人は影を薄くして最後まで生き残ってたようだ。


「先輩!! 彼、今の戦闘でなんとスキル、バーサークを獲得していたようです!!」


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