第52話 彼vs彼女
「先輩! なんか言ってますよこの人! ヤンキーみたいな人が彼に向かって挑発してます、それも初期装備であることについて! 普通に考えれば逆に初期装備でここまで来れていることに注目すべきでしょ! しかも彼も彼で隠れていたのに枝を踏んでバレるっていう面白いことしてましたし、今回はコントでもしてるんですかね?」
おっと、彼女がとうとう本格的に壊れだしたようだ。まあ、確かにこの一連の流れは面白かったが、彼女がこれほどまでにも急に饒舌になるとは一体何があったんだ?
それよりも、今回は普通の敵と遭遇してくれたようで何よりだ。これまでのことは忘れてやるから、俺からはこんな感じで一人ずつゆっくりと倒していってくれ。もう、とうの昔に決勝進出することは諦めているから、なるべく音風を立てずにヌルッと行ってくれ。頼むから。
「先輩! 彼が盾使いに遭遇しました!」
「え、何? あの盾使いか?」
あの盾使いというのは、それこそ彼と同じくらいにこの世界に飛び込んできた一人の少女のことだ。その子はモンスターが怖いのかひたすら盾を構え続けて、チクチク攻撃していくというスタイルをとっているのだ。
そして、彼女の凄いところはそれを貫き通すだけでなく、ある程度の実力までのし上がっているというところだ。このスタイルでこのレベルまでやってくるということ自体、とても稀なことではあるため、非常に興味深い観察対象の一人となっている。
そんな彼女が彼と激突するとは、どんな因果だろうか。その結果がどんなものになるのか、非常に楽しみだ。
「せ、先輩!! 彼が彼女に対して攻めあぐねていますよ!」
「な、何!?」
今は別の仕事をしていたのだが、つい手を止めて彼の様子を見に行ってしまった。するとそこにはまさかの光景が広がっていた。なんと、彼が盾使いの少女に対して有効打となる攻撃を一度たりとも与えられていないのだ。
彼女は盾の中に引きこもり、予選終了まで誰も倒さずに生き残る戦法をとっているようだが、反撃を加える必要ないため、完全に防御に徹している。そのため彼が苦戦しているのだ。
また、彼女の持っているスキルに一つの彼が苦戦する要因がある。それは彼女の自動防御というスキルである。それはその名の通り自動で攻撃を防いでくれるというものだが、彼は相手の反応速度を超えることで攻撃を通そうとしているのだが、このスキルによってそれが阻まれている。
彼はフェイントを織り交ぜながらあらゆる角度から攻撃を仕掛けているが、どんなに彼女が対応不可の攻撃を放っても、自動で防御されてしまっては敵わない。彼は一体、どうやって彼女を攻略するのだろうか。
「あ、先輩、そろそろフィールド縮小の時間ですね」
「ん? もうそんな時間か? 私たちもすっかり夢中になっていたようだな」
フィールド縮小、それは残り時間が迫ってきている中で決着を早める為に戦闘スペースを狭くするというものだ。これによって残っているプレイヤーは中央に集まることになる。彼らも戯れている場合ではなくなるだろう。
「因みに彼らはどの辺にいるんだ?」
「彼らはちょうど中央付近にいますね。どうやら、あの盾使いの子がフィールド縮小のことまで考えて陣取りをしていたようですね」
ほう、それはなかなかに賢いな。ということは彼らの戦いはまだまだ続くということだな。
「ん?」
彼らが中央にいるということは?
「先輩!! 彼らのところにプレイヤーが押し寄せてきます!!」
うん、だろうな。
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