第51話 接敵瞬殺
「先輩! とうとう彼が積極的に地上の敵を自分の足を使って倒していくようですよ!!」
彼の動向については私もリアルタイムで見ているから一々報告する必要はないのだが、それでも彼女にとっては報告をしてしまうほどのことだったのだろう。なんせ、人の形をした怪獣が市街地に首輪も付けずに放たれたようなものだからな。彼の異常性を知っている我々からするとかなり不気味なことなのだ。
それに、彼の存在もほぼ確実に公のものとなってしまうだろう。彼は今まで接敵瞬殺で相手を屠ってきたため、目立たずにここまでくることができたから良かったが、もう、こればっかりはどうしようもない。彼がいたって普通に戦うだけなんだからな。止めようもないのだ。
「先輩! 彼の最初の獲物はどうやら二人組プレイヤーのようですっ!」
よりによって二人組か……せめて一対一ならば彼が相手よりもただ強かった、というだけで終わるかもしれないのに、わざわざ二対一という不利な状況を選択してくれた。これでもし彼が勝った場合、彼の強さがより引き立つだろうし、彼は恐らく勝ってしまうのだろう。
普通のプレイヤーが二対一なんてして一人側が勝つことなんてどれくらいの確率だと思っているのだろうか。本当にやめていただきたい。ただでさえ目立つというのに、ダメ押しはしなくてもいいだろう。
よし、もう悲観的になるのはやめよう。最初にこのイベントは楽しむと決めたじゃないか、それを貫こう、初志貫徹というやつだな。だが、どうしても今後が思いやられるこちらの身にもなって欲しいものだ。
彼の相手は一人が片手剣と盾、もう一人がメイスという、両方近接装備ではあるものの、立ち回りとしては被っておらず、二人のパーティーとしてはなかなかいいのではないだろうか。恐らく身内で一緒になったから共闘しているといったところだろう。まあ、確かに残り一枠を争うよりかは、ここで共にリタイヤした方が今後の友情関係にも日々が入らずに済む。
ゲームの恨みは男子間でのみ強力に作用するからな、気をつけた方がいい。
「あっ!!」
後輩が思わず声を出してしまったようだ。何が起こったかというと、相手が移動するタイミングで警戒を一瞬解いた瞬間、彼がメイスの敵に対して不意打ちを仕掛けたのだ。それも拳で。
だが、流石にそれだけでは決まらずに片手剣の味方にフォローに入られ、メイスの人は反撃の機を窺っている。この二人はの立ち回りは、片手剣が相手をあしらいながら、メイスが大きな一発を決めにいく、といって感じだ。なかなかいい連携も取れている。
相手の連携の前に彼もかなり苦戦しているようだ。これはもしかしたらもしかするかもしれないぞ? ここで彼が脱落してくれればもうお、いうことは何もない、あとは心置きなくイベントを楽しめるのだが……
「先輩、彼の動きどんどん良くなってます、よね……?」
そう、彼の反応が良くなっているのだ。先程に比べると明らかに反応速度が上がっているし、動きのキレも良くなっている。
「おい、彼はなんのスキルを使っているんだ?」
これほどまでに強化されるスキルがあっただろうか? それにもしあったとしても彼がそんなスキル入手していたらうちの後輩が黙っていないと思うのだが。
「先輩! 私もこんなスキルがあったのか気になってログを参照しているのですが、どうやら彼はいつも使っているスキル以外、特別なものはつかっていないようです!!」
「なに?」
スキルを使っていないだと? 彼が基本的に使っているスキルとは、未来予知や集中、等だろう。しかし、それではなぜ彼の動きがこれほどまでに良くなっているのか説明がつかないぞ? まるで強敵と戦って強くなっていく主人公みたいではないか!
「あ、彼、勝ちましたね」
で、でしょうな。
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