死にたがりが逝く！〜運営編〜

第50話 斜上的共鳴

「「……」」

　彼は自分の鳥型従魔から飛び降りて、敵プレイヤーを踏む、という極めて斬新すぎる手法で、もう既に四人目を爆殺させた。このミサイル方式とでも言えばいいのだろうか、兎に角、威力、隠密性共に優れている。

　威力に関しては言わずもがなであるが、隠密性に関して、轟音が鳴るためバレてしまうのではないかと思うのだが、意外にも周囲のプレイヤーは気にしていない様子だ。

　むしろ、轟音があるってことはそれほど威力の高い攻撃なり魔法なりを誰か放っているということであり、近づくのを避ける傾向にある。それに、彼も彼ですぐに従魔を呼び出し、その場から逃走するため、全くバレる気配がないのだ。

　恐ろしい、非常に恐ろしい。どうやったらこんな手法が思いつくのか到底理解もできないが、この調子でプレイヤーを倒し続けたらいかにバレにくいといえども流石に露見してしまうだろう。それに、こんな暴虐的な手法をとっている時にバレると彼のイメージもかなり悪くなりそうだ。

「あ、」

　彼が地上に降り立った。どうやらもうミサイルにはならないらしい。どういう心境の変化で終了したのかは分からないが、とにかくこれで一安心だろう。ただ、地上にいるからと言って完全に安全というわけではない。地上戦でも彼の異常さは容易に出てきてしまう。それに周りが気づくのも時間の問題だろう。

　ん、彼が立ち止まって何かをしているぞ。

「先輩！　彼が気配感知を取得しました！」

「は？」

「彼はどうやら自力で気配感知を取得したようです！！」

「は？」

「だーかーらー！　彼が立ち止まって、自力で気配感知を取得し、た、ん、で、す！！」

　いや、彼が気配感知を取得したのは分かった。分かったのだが、どうやってだ？　そんな簡単に取得できる代物じゃないだろう。気配感知は気配察知の上位互換である、つまりざっくり言うと、魔法と魔術みたいな関係なのだ。

　それをそんな簡単に取得されても困るのだが……一体どうやって獲得したというのだ？？

「す、すまん。ただ、どうやって獲得したものかと。そんな簡単に取得できるものなのか？」

「私もそれをが気になったのですが、ログを見る限りですと、彼は、気配察知を使用した後に、集中を使い、その後更に瞑想を使用することで気配感知を取得したようです」

「は？」

　気配察知を使って、そこから集中して、瞑想しただと？　そんなこと、と思わないでもないが、スキルには相性の良いスキルと悪いスキルがある。相性の良いスキル同士を組み合わせて使うことで相乗効果を生み出せることは確認されているのだ。それを私たちはシナジーと呼んでいる。

　だが、そのシナジーを使って新たなスキルを獲得するなど聞いたことがないぞ？

　彼の行動から推察してみるよう。彼はプレイヤーを探すために上空を飛んでいた。しかし、そこから降りて気配察知を使用した。つまり、上空からではなく、地上からプレイヤーを探したかったのだと考えられる。

　そこで、もしかしたら彼はこう考えたのかもしれない、気配察知を能動的には使えないだろうか、と。もし、そう考えたのだとすると、気配察知に集中して、さらに集中する為に瞑想したのも頷ける。瞑想の効果は随分前から科学的に証明されているからな。

　しかし、それにしても都合良すぎないか？　まるでこの組み合わせをしたら確実に気配感知を取得できると知っていたかのような行動だ。

　だが、もしそのやり方知っていたとするならば、どこから漏れたのだ？　いや、漏れたという表現は正しくない。我々の運営の誰もそんなことを知らないのだから。もしかしたら、チームの誰かが知っていたのかもしれないが、殆ど家族のような存在だ、知っていたら隠さずに伝えてくれると思うのだが……

「……って、まずい！」

　彼が能動的に気配を感知できるようになったということは、それはとりもなおさず、彼の大量虐殺が始まるということでは……！？